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消滅可能性都市のウソ。消えるのは、地方ではなく「地方自治体」である。 (No.1016)

今年、増田寛也氏の「消滅可能性都市」のレポートが世間を騒がしています。中央公論新社からも「地方消滅」なるセンセーショナルな新書本が、出されたそうです。しかしながら、この論自体が大変乱暴な意見であると共に、その処方箋そのものは極めて危険である。ますます地方を衰退させかねないので警告します。



昨晩頭にきたので、連続ツイートをしてしまったのですが。その内容は以下に出してあります。

「消滅可能性都市のウソ。消えるのは都市ではなく、地方自治体である。」
http://togetter.com/li/705776

このレポートが極めて世の中をミスリードしようとしているのは、2点あります。


(1)都市そのものは消えない、(今の)自治体が消える。「自治体破れて山河あり」

まずこの消滅可能性都市というのは、都市そのものが消えるということではない、ということです。このレポートで消えるといっているのは、女性が減少し出生数が減っていき、人口が1万人を切ると自治体経営そのものが成り立たなくなる、ということを言っているのです。→ http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03_2_1.pdf
つまりなくなるのは地方そのものではなく、今の単位のままの地方自治体であって、それは人口減少社会において当たり前な話で、むしろそのために行政改革があるわけです。従来の行政単位のやり方を捨てて、広域行政でサービスを回していく、複数自治体横断で居住・業務両面での立地適正化を図るという対応をしないといけないという、現実に沿って破綻しない社会を実現する行政議論をするのが当然です。このまま行くと自治体は破綻して行政サービスはできなくなりますよ、という何も自分達が変わるという前提がないのが驚愕します。「自治体破れて山河あり」。今の自治体を変えて、変化する社会に対応するほうが現実的です。


(2)処方箋がもはや夢であり政策ではない。
もう1つは、政府を批判している体でありながら、処方箋がこれまで何度も政府がやってきた話を焼きまわししているだけという点です。

「東京一極集中をやめろ」というのも幾度と無く叫ばれた言葉です。都市機能を分散移転するとかアイデアはいくらでも出てきますが、東京から奪うという発想事態がイケてません。地方が伸びて、東京以上に魅力的になる方策を独自に考えるのではなく、東京から何かをぶんどろうという発想です。伝統的な地方分権的発想と同じで、権力を地方に戻すという、小さな箱のなかの争いです。
 
そもそも地方自治体単位での社会減(東京とかにとられる発想からすれば、社会増減の指摘だろう)は、都道府県単位でいえばはるか遠い昔から発生しています。以下の一覧は、総務省統計局統計調査部国勢統計課「国勢調査最終報告書 日本の人口」からひっぱってきた都道府県別人口増減に関する資料です。赤くなっているのが減少している数字のところです。社会減(流入する人口より流出する人口のほうが上回っている)に至っては、戦前から真っ赤っ赤というところが少なくありません。今更これを変えるという案そのものが非現実的で、べき論と曖昧な見込みだけで巨額の財政支出をしたら、むしろ地方に沢山のインフラや医療福祉整備だけがなされて、その財政的重圧で地方の公共サービスが劣化し、さらに人が(特に若者が)住まなくなる可能性のほうが現実的です。そして、それらのツケは僕らの世代が払うことになるのです。
◯自治体のために人は住んでいるのではない
さらに、「地方に若者が戻るようにせよ」「子供を産めよ増やせよ」といったところで、人々はより好条件の職を求めたり、より良い教育を求めたり、より良い都市生活を求めた上で、東京を選択しているわけです。2000年代の10年だけでも首都圏では100万人クラスの社会増があるわけです。政令市一個分の人口が地方から首都圏に集まっているのです。それだけ地方に仕事も、教育も生活も相対的に見てないから、多くの人達は移動しているわけです。結局、厳しい言い方をすれば、地方自治体を主語とするこのレポートに則れば、これまでの地方自治体は地方の若者たちにとって何の魅力もないことしかしてこなかった、残るに値しない、可能性のない地域になっていたのではないでしょうかね。結局仕事作ると言っても、また公共事業を増加させ、公共資産を無駄に増加させてその維持費で将来の自治体がひいひい言うようになるだけでしょう。戦後高度経済成長期の公共ストック問題を今抱えてこんだけ朽ちるインフラ問題とかいっているのですから。ストックを作る間だけの仕事に自分の未来を託しませんよ。普通に。若者たちは馬鹿ではありません。そんなことわかっているからどんどん地方を抜け、政治・行政より相対的に経済が強い大都市へと移動し、戻りもしないのです。

その人達を地方に戻して、子供を産めよ育てよ・・・。それは国策だ。そういうこといっているから人が抜けて自分なりの人生を選択しているのではないでしょうか。若者たちは子供を産み育てるマシーンではありませんよ。どういう見方しているのでしょう。ほんと。

最後に外国からの移民政策については「高度人材に限る」とか言っていますが、そんなのは世界の高度人材の人たちが選択する側です。高度人材なんて世界各国が来て欲しいと思う人材なわけで、売り手市場です。買い手側である日本が「高度人材じゃないとあかんわ」とかいっている段階で、勘違いした上から目線も甚だしい。
 
◯既に政策のヒントは地方で起きている。
今までどおりやってたら地方自治体が潰れるという当たり前なことを「地方消滅」と称して危機感を煽り、結局は「国がどうにかしろ」「国難だから若者どうにかしろ」というご意見を見るに、全くもってこんな政策打たれたらますます地方から若者もいなくなるなと思わされるところです。

しかしもう政策のヒントは地方で起きています。それをみれば色々なことがわかります。

乱雑な拡大した公共施設を集約し、その集約した施設開発は公共事業ではなく、民間開発事業で実施させて、公共床はテナントとして家賃を支払って入るという方式に変えられるようにする。行政からの支援についても、補助金・交付金ではなく、金融支援策に切り替える。民間施設も同居して公共施設にくる年間のべ数万人〜数十万の人たちを対象にした民間商業・サービスを考えて、持続的な仕事をつくる。既存の使われていない空き家などのストックをリノベーションして住める、職場を作れる、都市型産業の形成に向けた政策を考えて、持続的な仕事にしていく。
従来のなんでも税金でやるという地方の考え方を改め、経済開発的なアプローチを徹底しなければ、もちないわけです。さらに居住・業務に関しても立地適正化を図って効率化をし、行政サービスも自治体単位で実行せずに複数の自治体が相乗りする共同行政サービスの組合や会社をもっと効率的に走らせて、少ない財源でもサービスを保持できる方策を考えるのが当然でしょう。
もっとディテールをちゃんとつめなければ、全く話にならないわけですが、方向性そのものがこのレポートは全く今の実情、これからの未来に適合していません。むしろいま地方で成果をあげているケースをみればこれらの政策的ヒントはあると思うんですが、関係者のお耳にはどうしても届かないようです。

何より「べき論」ではなく、そのべき論を現実に導入・実現していく方策がなければ言って終わりだから、僕らは悩んで色々と全国各地で仲間と共にチャレンジし、小さな成果が出たら他の地域でも試したりをしている。自分達の身銭をきって。リスクを負って。

高みの見物でウソの地方消滅を流布するのはやめて頂きたい。
とはいえ、一市民にとっては、くだらない自治体の取り組みをみたら、その自治体を自らが変えることではなく、自治体を替える(自分が違うエリアに移住する)ほうがよっぽど簡単なのです。だからこそ人はダイナミックに移動しているのだと僕は思います。

政策的なヒントは以下のレポートなど見て頂くのがよいかと思います。

http://www.minto.or.jp/print/urbanstudy/pdf/research_01.pdf
 
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コメント
北海道に長いこと居ましたが、農業が盛んな十勝を除き、北海道全体において、何故500万人もの人が生きているんだろうと疑問を抱いていました。主要な産業もないのに不思議でした。

地方再生については公務員が出てくるからおかしな方向に進むと思います。工場、農業(専業主体に限る)、漁業、観光等産業面から逆算して決めてほしいと思います。
  • saru
  • 2014/09/08 6:04 PM
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