「報連相しない、させないマネジメント」 (No.932)

「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)は社会人の基本」と言われて久しいですが、私はそんなことはないと思っています。ホウレンソウが必要なのは、チームで意思疎通を互いに図りながら進めましょう、という意味としては納得がありますが、「部下が上司に常に報連相しなければならない」というような考え方が非効率だと思っています。あらゆる組織で、現状が上手くいかないから、報連相を徹底しろといって報告書を増加させたり、情報共有の名のもとに会議体を増加させたりして、結局は事業が回らなくなって墓穴ほってることが沢山見受けられます。そんなことを増加させても、寛容な仕事はうまく回らないです。単なる管理側の責任回避、精神安定剤であることがほとんどです。私はこれを「ホウレンソウ・シンドローム」と呼びます。 まちづくり事業の現場でも、またあらゆる事業の現場でも発生するのが、「報連相のコスト」です。上司からすると問題が発生する前に報連相を細かくしてもらわなければ管理できず、何かが起こった時に適切な判断や責任のとりようがないという考えがあります。チームが「情報は隠すのではなく共有するのが当たり前」というコモンセンスは正しいとは思います。しかしながら、何より上司は部下をうまいこと働いてもらって、チーム全体での生産量を大きくすることが何より優先される目標です。このためで説明に係るコストは可能な限り削減したほうがいいのです。 「報連相に係るコスト」には、上司にも部下にも、ついては組織全体にとっても2つのデメリットがあります。 まず1点目として、そもそもの事業にかける時間が削られてしまうことです。報連相を支えるのには、週一度の定例会議や、下手すると週報・日報みたいな話が出てきます。会議に向けた様々な資料を容易したり、報告書を策定するのに時間をかける場合、それなりに時間が費やされます。 1日1時間程度、説明書類を作成し、一週間(5日労働)で5時間。さらに定例やその他会議が週3時間とすれば、合計8時間になります。ほぼウィークデイ1日分の時間を説明に割くことになります。場合によってはこの資料だけでは分からない、とかになってしまったら、ますますもって資料作成に時間を取られていくことになります。 これでは、事業に割ける時間が徐々に少なくなり、内部の情報共有のため、ホウレンソウのために時間(つまりは労働コスト)が無駄に費やされることになります。 2点目として、チームのモチベーションが下がっていくことです。 チームとして働いているのに、管理する側、される側。説明する側、される側。という対立関係が発生し、何より内向きで批判されたり、何かを説明して、それに指摘されてというプロセスそのものがネガティヴなものです。同じチームなのに「理解していない」ことを前提とした関係で、いい仕事ができるとは思えません。徐々に内向きな説明会議に時間を費やしていくと、これまたモチベーションは下がる一方で、事業に悪影響が生まれます。 このように報連相にかけるコストは可能な限り下げたほうがいい、意思決定者は自分の会社や部署で報連相の徹底をすればするほどに、事業は上手くいかなくなると思います。 そのため、できるだけこれを最小化する方策を考えたほうがいいと思っています。意思決定者は自らの手を使って情報を把握し、迅速に決断していくことが仕事であり、部下に情報提出や説明を強要して彼らのリソースを使わないように尽力したほうが得策なわけです。 一貫して言えることは「業務の中でいつの間にか報連相ができているようにする」ことが重要であるということです。業務を進めることとは別に、報連相を要求してはいけない。だから業務を進めているとそのうちに報連相で必要と設定する情報が共有されているようにすることがマネジメント側の工夫のしどころとおもっています。説明しろ、と共有するのは誰でもできる愚行であることは先に述べたとおりです。 具体的な方策として大きく5点があると思います。 (1)意思決定者はチームのやりとりに常に参加する。 まず意思決定者は報連相で情報共有するのを止めるのが第一だと思っています。常にチームのやりとりについて参加し、社内での情報共有はグループウェアなどで皆でやることを徹底し、外部とのメールのやりとりはCC専用MLなどを用意して共有する。これで大抵のチームメンバーのアクションは相互に把握できるようになります。情報共有のために日報やら週報やらは全くいらなくなるでしょうし、それらよりも効果的に風通しはよくなります。 (2)口頭での会議は最小化し、ネットでやってしまう。 私は高校の時からネットの掲示板やIMなどで議論するのに慣れているので、口頭での会議よりもネットでやったほうが効率的だと思っています。それは2点あり、まずは皆が自分の都合のいい時間で議論に参加できるため固定的にまとまって時間を費やす必要がなく、誰かが暴走して語り始めてしまうような無駄な会議の時間に付き合う必要もなくなります。もう一つは、議事録が議論のプロセスごと分かるように完成するのです。「ここで議論したから見といて」とURL指定して、あとはコメントを寄せてもらえれば、たいていの議論はできてしまいます。 facebookのやりとりで教えて頂きましたが、アジャイル開発などではこのように各工程の作業量なども共有しながら進めたりするネットツールがあるそうです。口頭や固定的な議事録などでは無理なことがネットで可能になっていくことが沢山ありますね。 http://www.pivotaltracker.com/ (3)議事録など資料作成者担当を決めずに会議中に参加メンバーで共同で書き上げ、参加できなかったら人は自分で読んで把握する。 会議は可能な限りゼロにしようとしても、皆で話したほうが早いこともあるので開催することもあります。ただし、時間的・物理的に参加できない会議もあります。私なんかは遠方の組織と仕事することが多いため、常に物理的にはそこにいないことが多くあります。 こういう時にこれまでは「議事録担当」といって好き勝手話す人と、議事録とる人に分けて考えたりしていましたが、私は議事録は可能な限り意思決定者も含めて皆で作成すべきと思っています。議事録担当だけでは完璧なものは無理で、結局皆で確認して資料修正に時間かけたりします。私も様々な国の会議とかでも、議事録確認メールをもらって確認しているだけであっという間に時間が経つ非効率性を経験しています。議事録担当+皆で事後チェックというプロセスでは膨大な時間が無駄になっていきます。 そのため、議事録作成はgoogleDocsやグループウェアを開いて、皆で入って共同編集していくスタイルが一番ベストだと思っています。皆で意見を言ったらそこに記載していく。話ながら記載して、不足している点は補っていくという会話とメモのリンクです。これで大体終わりです。 最近ではSkypeなどもあるので、会議参加できない際も遠方から参加できる環境整備をしておくのもコストはほぼゼロに近いのでやっておきましょう。これであれば、先のgoogleDocsに遠方からも入れるので、自分も議事録作成に遠方からでもシームレスに参加できます。 (4)分からない時は意思決定者が聞きたい人に口頭で話を聞いて、資料を共同作成する。 基本的に上記3つの方法で、情報共有の基本体系を変えて、効率的に事業に集中出来る環境を作ることに徹するのが重要です。これによって、かなりチーム内で時間は効率化され、モチベーションが下がるような内向きの変な報告義務みたいなことも少なくなっていきます。さらに、意思決定者はそれでも分からない場合は「自分が悪い」と思って、聞きたい人に口頭で話を聞いて、資料は共同作成することです。 呼び出して「それでは不十分だ」みたいなことをいって作業させると、ますます事業進捗はしなくなって悪循環であることは前述のとおりです。ましては、検討委員会やら定例会議を増加させて情報把握のための会合増加させたら、ますますもって終わりです。 (5)それでも無理になったら、エンパワーメントすること。 何より大切なのは、意思決定に必要な情報というを上記のような形で効率的に意思決定者がプロセスに参画していくことに務め、分からななったら自分でやるというのが基本です。ただ「それでは仕事が回らない」という人は、圧倒的に自分だけで決めようとしている証拠と思います。自分が把握しきれない量の情報を収集しようとしているのであり、上記のようなプロセスが実現できない場合は能力の限界だと思って、エンパワーメント、権限を下に降ろす意思決定をすることです。もっと下でどんどん意思決定できるようにしなければ、恐らく仕事は回らないです。先のようにベストな意思決定をしようと下に報連相をどんどんさせれば、ますますもっと仕事が回らなくなりますから、効率的な方法は、自分たちで一定決められるようにし、肝心な意思決定に係るところを自分でやる。ただ細かな情報もオンラインで共有されていれば、自分次第で見に行くことはできる、という環境にすることです。 ま、こんなことを自分としては、自分が始めたまち会社、パートナーとして協業しているまち会社で実践しています。過去にそして今も私は商店街、NPO法人、生協、財団、政府機関、グローバル企業などで仕事をする機会を得てきていますが、これらにおいても共通して言えることだと思っています。管理側の精神安定のために報連相を強化するのではなく、本当に生産性を確保したいと思うなら、上記のような方策をとることです。ネットの登場によって飛躍的に情報共有は簡単になっていますから、これを活用しない手はありません。 んでもって、月1度でもいいので飯でも食いながら語り合いましょう。…

商店街活性化 | 経営からの地域再生・都市再生

二回連続でまちを変えるために必要なことって何だろうか、という観点からブログを書いていました。まち起業を促進しなければいけない、イベントばかりやっていたらいけない、のは今のまちの衰退は、構造的な課題を招いている背景には、そのマネジメント手法などの方法論と共に、主体者(地権者・事業者)のやる気がなくなってしまったりしていることも多いため、新陳代謝が全てに優先される、というポジションに立っています。 ■ブログ「「まち起業率」がまちの未来を決める (No.927)」「イベントを恒常的な取り組みにするためのポイント (No.928)」 私が役員やってる熊本城東マネジメントでは、ここ3年間の廃棄物処理の合同化で生まれた基金の一部を利活用して、オーナーと合同し、今年は新たなシェアハウスやオフィスなどの整備を中心部で計画しています。その他のパートナーエリアでも積極的に、新たなまち起業を喚起できるよう地域での取り組みを強化しています。 しかしこの時に重要なのは、逆算です。このネタについては改めて整理しますが、まち起業を喚起するのにスペースを用意するのも「見込み」とかで投資する時代ではなく、あくまで逆算を基本として考えています。開発前に一定の面積を埋め、キャッシュフローを確定させてから、投資をする。需要見込ではなく、実数としての需要を開拓してから投資です。 ただ、そういうまち起業したい人とどう接点を持てばいいのか、という話が出てきます。新たな層をいかにしてキャッチしていくのか、というテーマはまさにリーシングテクではあるのですが、これまでのようなリース対象の店とかではない、全くあらたな層の取り込みとなると、ルートそのものが異なります。 さらに、オーナーか運営会社が民間として投資をして回収するビジネスとして展開することが大切。これはエリアバリューを上げる上で、周囲の物件で再現可能なビジネスモデルであることが大切で、補助金などに依存すると結局のところ予算が外から入らないと動かないということになってしまいます。なので、民間で十分に投資回収ができること。とんでもなく儲かる必要はなく、今は空いていていい条件で借りてくれる人なんてこの時代にそう簡単に出てきませんので、自分で動かして価値をつくろうとしているオーナーさんのマネジメント方針があるのが不可欠です。 また起業メソッドは、・これまでと異なる層が中心部にはいってビジネス(まち起業)するための事業であること・先行投資型ではなく、実数積み上げて、損益分岐点を突破すること・遊休不動産をオーナー自らが賃貸借可能な最低限家賃を考えなおすこと・民間で投資して回収できるビジネスにすること(投資金額を回収可能な金額にすればいい) これはイノベーションのジレンマの突破です。中心市街地不動産のジレンマ突破であり、さらにしいては地域としての産業活力の創造につながっています。衰退する地域産業は新陳代謝が不可欠。これまでの顧客を対象に性能をあげて、高付加価値化を狙っていた中心部ですが、そんなんじゃなくて、もっと簡易な性能(不動産自体でちゃんと整備していないとか)の劣るもので、安く提供してあげたほうが、より大きなマーケットがあり、今後の成長余力もある。だから新たな層の取り込みは、短期的にリーシング対象の層はお金を沢山もっていない小規模な方々が最適で、高級路線ではないのが大切なんです。これは前述のまち起業~のブログをお読みください。 ということで、話を戻します。こういう方法にはいくつかパターンがありますが具体的なものを題材にしたほうが分かりやすいので、私が仕掛けている人たちをよく存じ上げている北九州と枚方のケースを今日はふれさせていただきたいと思います。私も今年度は必ずやこのカテゴリは攻めます。 ■メルカート三番街、ポポラート三番街公式サイト■ポポラート三番街記事■メルカート三番街事例集「三番街事業と魚町サンロード商店街のエリアマネジメント(1)」 ■(ブログ)北九州市魚町の木造ビルを改築した「Mercato3番街」の意味するコト (No.895) 北九州のメルカート三番街のケース私も過去のブログで触れている通りですが、この4月からポポラート三番街という新たなスペースが開設されました。こちらは、mercato三番街も開設されている裏手の商店街で市を開催したりして集まったり、そのmercato3番街自体のインパクトに反応した、自分でものを作って販売したいという意思のある方が結構いて、そういう人たちを60名ほど集めて開設されました。プロデューサーである嶋田さんが全体の8割は新規開業組、あとは自宅や他で店やってた人が中心部に移転してきた層とのこと。 これもまさに先の「まち起業メソッド」に沿っています。既に周囲の不動産オーナーも関心をもって、次のエリアバリュー創造のステージを目指して動きが拡大しています。 ■五六市公式サイト■枚方鍵屋別館公式サイト■枚方鍵屋別館リノベーションプロジェクト資料 Sartoの加藤さんたちが仕掛けている五六市は、枚方活性化のために毎月第に土曜日に開設している市です。この市は参加料が必要なので、参加料収入があがるが、土地代とかは土曜日の使っていない商店街の空き地とかをただで貸してもらっているので、運営費を差し引いて差益がでる。これを利活用し、さらに参加者の中ではやはり頭角を現す素晴らしい方もいるということでセットで、その五六市の中心部にあった鍵屋別館さんをリノベーションして、新たな物販店が集まるビルに生まれ変わっています。 これも「まち起業メソッド」の王道です。こちらも他物件オーナーからの相談も相次いでいる状況に。 ひとまずブログなのでこの程度で。(詳しくは本か別の機会に掘り下げていきますので、その時ぜひ)これらの事業の背後にはまちの中心性を牽引するミッション性とヴィジョンをリーディングチームが共有していることが肝心です。極端、単に短期的にどうこうしようと思えばもっといいビジネスは沢山ありますが、構造的に新たな層に中心部に出てきてもらおうとする不動産オーナー、出てきたいと思っていたがこれまでは無理だった人々、そしてそれらをプロデュースするプロ。こういう三位一体が地域で起きてこそ、中心部は中心部たるポジションにあると思います。 ということで、今年度は色々と北九州や枚方でも色々とご一緒しつつ、その他の地域でもこの手のプロジェクトを仕掛けて頑張っていきたいと思っています。私としては、メソッドとして体系的に固めるのも頑張りたい。

自治体による大型店規制-70年代と現代(福島県条例)を元に- | 経営からの地域再生・都市再生

今日からまた一週始まります。いよいよ冬といった空気で、今日は今年初めてマフラーを手に取ることになりました。午前中の大学院の経営組織の講義で出していたレポートが返却され、ひと段落です。レポートの内容としてはダイエーの90年代以降の業績不振に対する組織改変、特にカンパニー制度の導入廃止などの過程について書いたもので、このブログとも関係する流通系の内容なので、今度ここで話したいと思います。 六角橋商店街また、先週の金曜日には神奈川大学の中田信哉教授にお会いしてきました。物流などをはじめ、幅広く商業関係の研究されており、政府系の各種審議会での委員などを務められるなど政策面でも活躍されています。また著書も多いため、ご存知の方も多いのではないでしょうか。元々が民間企業、民間研究所出身ということもあり、大変参考になるお話をお聞きできました。(□ロジスティクス入門□ 明日の宅配便市場など)その折に丁度、神奈川大学の最寄り駅である六角橋商店街のふれあい通りを初めてみました。(左写真・参照)仙台などを始め、大都市部でも一部かつての闇市がいまだに整理されずに残っているケースがありますが、飲食店などが中心なのを記憶しています。しかしながら、ここの場合には物販などもかなりあり、表通りにはない不思議な空間だと感じさせられました。 ■本日の主題「自治体による大型店規制」さて、もっとこのブログでも早く取り扱うべきだったのかもしれませんが、自治体に関する大型店出店規制について本日は取り上げられれば、と思います。先月、福島県議会にて「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」が可決され、全国自治体から問い合わせが相次いでいるようです。以前このブログにおいて、基礎的自治体規模(市町村)で決定可能な大型店出店において、広域的調整などが広域自治体、もしくは政府などで必要なのか、必要な場合にはどのように可能であるのか、と書いたことがありました。また自治体による大型店規制は、70年代などにも見られました。当時の大型店は1500m^2未満の店舗を規制したため、自治体によっては自主的に条例や要綱を制定した(石原、2000)ことが言われます。当時は、大店法では規制しきれない中型店舗(200-300m^2以上など)とするものがあり、全国不統一な状況を打開すべく大店法の改正が行われた(第二次大店法)といわれています。 今回の福島県による規制アクションは広域自治体が、基礎的自治体の意思決定とは別に、大型店出店を規制しようとする内容であると理解できます。 まず今回の規制内容としては、しっかりと内容を見る必要があります。今回の規制を簡単にまとめると、 ?∥膩薪垢僚佚昂弉菽奮?(大規模小売店舗立地法手続きに先立つ形)での届け、説明会開催、を義務付け??県は内容を審議会等で審議会への諮問と答申を経て大型店側に建設予定地の変更などを事業者で通知??事業者は対応を県に報告?ぢ弍?が不十分な場合は勧告し、その事実を県報に掲載 という流れとなっています。まず百貨店法のような許可制や大店法のような届出制(きわめて許可制に近い)などの出店自体に対していの強制権があるものではないです。あくまで計画の届出と説明会等の開催といった、情報開示を義務付けるものであり、たとえ県の通知への対応策が不十分だと判断されても勧告されて、県法に通知されるだけと言えます。ただし、企業側も道義的な問題意識から、やはり自治体から歓迎されない道を選ぶことは行いにくいため、実際は上記の流れに可能な限り沿うことになると考えられます。 また出店自体を規制する意図というよりは、あくまで「郊外」から「中心市街地」に誘導することを狙っている内容と知事の発言なじからも伺えます。(細かい発言を見ると、あくまで郊外に出店するのではなく、中心市街地へ。という言葉があります。ただマスコミによっては削除されてしまっています。)ただし、事実上郊外への大型店出店への勧告というケースが予想されるため、近年の郊外SCの流れへの規制的色合いを持っていると言えます。 また、「大店法の復活」的な扱いをしているケースがあります。どうやら大店立地法への届けに際して事前に自治体側で協議するというのは、大店法時代を彷彿とさせるようです。ただし、大店法と異なる点としては、まず届出は出店予定地などの立地に限定された内容となっており、大店法時の事前調整4項目はどれも考慮対象となっていません。また、商調協(商業活動調整協議会)のように地元の商工会議所や商工会といった商業関連団体が事務局を担うものではなく、また構成も学識経験者などの専門家を中心とするようで、地元小売商業者の代表などは含まれる予定もパブリックコメントなどを見てもなさそうです。さらには事前商調協、事々前商調協といった、ある意味では公的規制の枠組み外で運用されて事実上の強制権を持つのではないか、という意見に関しては、大店法と同じ轍を踏むようにも思えません。 先般報道もされていますが、都市計画法の改正試案などを見ても、基本的に開発自体がまず住民に支持されるものであるか、という視点であるかと思います。かつてのような行政主導での規制制度ではなく、あくまで住民主体的な色合いが法律全般に強くなっているということを感じます。この時点で必要なのは、スケールとタイムスパンの2つの問題があると考えられます。前者は住民や政治決定を行う主体の規模の問題であり、後者は短期的スパンでの価値判断か、長期的スパンでの価値判断の問題と言えます。郊外大型店の開発では、地権者といったようなかつてのような関係者区分では不十分であることは言うまでもなく、立地する基礎的自治体だけでも不十分である実態があります。これらの場合に、自治体の意思決定、住民の意思判断をどこまでの範囲で問うべきなのか、も大変重要な問題となってきます。さらには、長期リスクをどれだけ測定できるか、というのも重要です。短期的には魅力的な店舗が来てくれることは住民(或いは消費者)にとっては歓迎すべきことで、基礎的自治体などにとっても固定資産税や地方消費税などは大変魅力的なものです。ただし、長期的には市場環境の変化、企業経営上の問題も含めて撤退などのリスクがゼロではありません。その場合にどのように影響が出るのか、その場合にはどのような対応策を講じるのか、なども同時に住民などに開示する必要があります。 今回の条例は大型店立地を中心市街地に誘導するという方法論を具体化したことは意味があります。これは、先般このブログでも紹介した、敬愛大学のbitaotao助教授の論文でも指摘されている、大型店と中小商業との共存関係から見ても、合理性のある施策です。ただし、大規模競争に入っている大型店からすると、競争局面を変えるようなインセンティヴが中心地にあるか、というか怪しいところではあり、事実上、立地を強制されるような形になっています。私としては今回の条例は、業態間競争論から離れて中心地に商業集積を集約するという意思決定を政治的にも行ったことは大きく評価できるものと思います。またこれまで戦略的な意思決定ができず、「郊外も開発する。しかしながら中心市街地活性化もする」という矛盾に満ちた政策をとってきた自治体とは異なり、明確に中心市街地への機能集中を図ろうとする姿勢が見て取れます。経済産業省などの戦略的中心市街地活性化などの方向性に沿うものであり、そのあたりも政府的からは特に歓迎される内容でしょう。今後、「郊外or中心市街地」の意思決定を迫られた際の意思決定の1ケースと言えるかもしれません。 その一方で、行政が専門家主導で出店への勧告などを行おうとするアプローチは、厳しい言い方をすると少々前時代的なものだとも考えます。今回の条例案は一定の評価を与えつつも、今回の条例は今後の実際の運用時に基礎的自治体の誘致合戦などにおいて、県という広域自治体がどのように立ち振る舞うのか、が大変興味深いものとなります。また実際に大型店がどのように対応するのかも、も注目ではあります。 郊外開発規制を行うことが、中心市街地活性化に寄与するロジックは長らく言われてきました。欧米各国の規制制度を見ても同様のものが見られます。ただし忘れてならないのは、業界内規制だけで産業が活性化するか、というと各国のケースを見ても、規制とともにさらに中心市街地側の自主的な土地利用の活発化や中小商業集積の再構築などを誘導する施策を講じています。何より、中心市街地地権者や中小商業主たちが活発に行動に出ています。 今回の条例はあくまで、無秩序な開発を制限するもので、商業を救うものではない、と明確に分かるようになっています。郊外大型店規制=中小商業を救う商業規制、と受け取られてしまうのは大変残念でのもあります。中心市街地側の商業主などもこのような制度が出来たからといって、「よかった救われる」などといったような意見を出しているのには違和感を覚えるところです。 現代の商店街の衰退は、商業における市場の変化とともに、大店法などの規制制度で守られてきたことで商業集積としての競争力が弱体化したとも言えます。自分たちがどうするのか、それが最も問われていることを忘れ、規制に縋ろうとしても消費者の支持は得られないのでしょう。その反映として、福島県に寄せられている意見の中には、イオンはじめ大型店が地方にもたらした魅力的な消費を支持する意見が出されています。商店街関係者も賛否両論の否定派の意見にも一理あることを忘れてはならないと感じさせられました。 明日は、規制の動きとともに進められる大型店への「地域貢献計画」の要求と、大型店出店企業のCSR活動について書きます。

2007年03月21日の記事 | 経営からの地域再生・都市再生

昨日は予告していた通り報告会を開催いたしました。この年度末の忙しい時期にも関わらず、60名以上の方にご参加いただきまして、大変実りある機会となりました。 時間に限りがありましたので、報告書の内容(250p程度)を全て伝えるのは不可能なのでエッセンスを抽出して報告させて頂きました。英米を中心に取り扱っていますが、市街地を民間で活性化する際にマネジメントを用いるのはグローバルスタンダードです。その中身は非常に日本においても参考になる内容で、ZonePropertyManagement(私が勝手に命名)などは既に国内でもいくつかの動きを私も始めています。 また早稲田の安井さん、法政大の保井先生からも大変貴重な意見を色々と頂きました。保井先生は今月西海岸の調査視察をされてこられ、プチバブルの発生やTIFの活用といった制度的なインセンティヴが効果的に機能している状況についてお話くださいました。安井さんからも既存事業者にこだわらず、新しい血を入れる重要性についての指摘がありました。 昨日の内容の詳細は配布した資料を以下に貼り付けておきましたのでご覧ください。 ■報告会資料ダウンロード(2007.03.20) 空洞化の原因は各国に差異がありますが、問題には共通要素が多くあります。今後は現場レベルで諸外国の団体と関係を構築して、互いの問題を協働で色々と解決していくことを検討したいと思います。 この春からは市街地再生に関しては研究段階を終え(2003年から2006年)、複数地域にプログラムを導入していく段階に入ります。このブログも各地区の報告などを中心に取り扱う機会が多くなるかもしれません。

大手企業による、金融事業への進出。(セブン・電子マネー「nanaco」など) | 経営からの地域再生・都市再生

毎日、駅で利用するのはSUICA。時々決済でコンビニやレストランで利用する、edy。携帯電話におけるクレジットビジネス、DCMX。 近年、既存の大手企業が金融事業に相次いで進出しています。SUICAは当然ながらJRですので鉄道。edyはソニーですので製造業。DCMXというクレジットビジネスを始めたドコモは情報通信業。とこれまででいえば、全く金融ビジネスとは離れた事業を展開していたわけですが、近年は金融事業の規制緩和が相次いだこともあり、めまぐるしく変化しています。金融業界内での変化より激しいかもしれませんね。 数年前に騒がれたセブン銀行(旧IYバンク)などによる、流通業による金融事業は、これらの他の企業から比較すると早期から注目されていたわりに、あまり目立たず、しかし着実に基盤を整えてきています。セブン銀行に関しては業績報告をみると、03年度から既に経常利益は単年度黒字を達成し、05年には累積損失も全て解消して余剰金を計上するまでになっています。英国などの欧州流通企業の多くは決済を全てグループ内の金融企業が行っており、流通業と金融業との融合が早くから進んでいたということを以前聞いたことがありますが、日本でも徐々に進んでいる感じですね。 このように好調な金融事業ですが、さらに来春からセブンイレブン等での電子マネー決済がスタートします。独自の電子マネーで、「nanaco」と呼ぶようです。これまでセブンイレブンでは電子マネーやクレジットカードでの決済は行えなく、近年他のコンビニで電子マネーやクレジットサービスが浸透しているのに対して否定的でした。今回の導入は、昨年に発表された内容だったと記憶していますが、独自の方法で電子マネーを導入する理由として、決済履歴などから独自の消費者の購買行動分析など「決済外の情報」の収集を目指していることもあるようです。このあたり情報収集に関しての目的設定は、さすがセブンイレブンらしいといったところでしょうか。 近年のコンビニの純増数はセブンイレブンが業界でもトップ。第二位のローソンはスクラップアンドビルドで全体数はほぼ横ばいで推移しています。つまり不採算店舗は積極的に閉鎖し、そのかわり有力地域に出店するという形です。この影響もあってか、既存店舗売上・利益共にローソンは伸ばしています。これに対して、セブンイレブンは数こそ増加しているものの、旧来の高収益力が少しずつですが、低下しています。それでもローソン等と比較するとまだかなり高い水準で推移していますが。 コンビニ このようにコンビに業界ではやはりマンモスのセブンイレブンで利用できる電子マネーカードは、私はきっと利用しますね。よくセブン利用しますし。 しかし電子マネー業界全体を制圧できるか、というとそれは難しいでしょうね。やはりSUICA(SUICA互換を含めて)が、制すると思います。ただマーケットを席巻する目的というよりは、先の情報収集の目的やポイント供与による購買動機の喚起、他のコンビニとの差別化(もしくは他が既にスタートさせているので、反差別化)を目指しているものでしょう。 しかしながら、トラックバックしていただいていたブログ(0番のりばさん)によりますと、なんとSUICAやEdyとも相互乗り入れが可能なものにしようと試みているようですね。SUICAやedyとの相互乗り入れは基本的な基礎技術はFelicaですから簡単なんですが、決済のためのお金をプールしているのは各管理事業者や金融機関などによるのでそれらとの関係を調整しないと、実際の相互乗り入れは中々できないので、そのあたりがどれだけ今後取り込めるのか、というところでしょうか。 どちらにしても、日本における様々な大手企業による金融事業への進出はまだ続きそうですね。

なぜ地域おこし協力隊は派遣先で困るのか。5つの改善策 (No.1029) | 経営からの地域再生・都市再生 [木下斉]

昨日、機会を頂きまして、栃木県内に派遣されている地域おこし協力隊の集合研修にお邪魔してきました。10名以上の協力隊の方々とお話をさせてもらい、私なりにすごい恥ずかしい昔やっていた地域で興した稼ぐ事業について話したりしていました。失敗も含めまして。受け入れている自治体職員の方ともお話をして、色々と悩ましき現状もお聞きしました。そのようなやりとりの中で、私なりに感じた点を書かせて頂きますー。 (参考web)地域おこし協力隊とは? ◯ 「行く側」も「迎え入れる側」も未経験さて、今回含めて全国各地でお会いしてきた地域おこし協力隊の方々。やはり色々と想いあって地方にいっている若者が多いわけですが、現実としては色々と悩んでいる人も多かったです。自分は早稲田商店会の時から様々な機会に恵まれ、全国各地にも高校時代から出かけていく、丁稚奉公の旅をさせてもらっていたので、なんとなく自分なりの地域に入っていくメソッドというのはあります。しかし、普通に生活していれば、いろんな地方に行く機会もないですが、地縁血縁ない人達といきなりどう話をしていいか、どのように事業やっていいかなんて分からないというのが当然な話でもあります。 それは行く若者だけでなく、ずっと地元に住んでいる方々もどう受け入れていいかなんて分からないし、さらに行政側も地域外の若者を向かい入れて、地域活性化をするなんてことも、過去やったことなんてないわけですね。 なんとなく制度が出来たことが流れができているものの、各自治体によってその対応はまちまちで、かなり個人の資質、行政側も担当者の能力、など制度として担保ではなく、個人能力に担保されているだけという実態を感じています。 そこで、ひとまず意見交換して感じた5つの改善策について整理します。 ◯ 5つの改善策 (1) 集落支援業務は分離すべし 業務的に話を聞くと、集落支援員とほぼ変わらないような業務になっている方もいたり、もしくは事業立ち上げを要求されているにも関わらず、集落支援に関する業務も行政から要求されている中途半端な環境になっている方もいました。まあ何をやっていいか本人も分からず、招いている側も分からないとこういうことになったりするのだろうと思います。 「地域おこし協力隊」ですから、地域がおきなきゃ話にならんわけですね。福祉や集落保護といった行政特有の業務とは区分した内容にしないと、事業なんて立ち上げられませんし、3年後自分で自立して生活していけ、なんて不可能な話です。 もし集落支援などを中心にするのであれば、地域おこし協力隊の制度を活用しないほうがよいと思うところです。ちゃんと各種派遣制度はあるわけで、区分しないとダメです。 ・将来的に行政の常勤雇用候補者のお試し雇用なのか・事業を立ち上げる人材の初期スタート支援としての雇用なのか そのあたりを明確にしましょう。それによって職能や3年の時間の過ごし方も全く違うわけですから。そのあたりがごちゃごちゃになっていますね。もう少しこのあたりの派遣事業全般の区分を明確にすべきと思いました。 (2) 兼業規程は全国一律でOKにすべし 兼業規制をしている自治体があるようです。なんかその可否については、これまた自治体次第てな話のようです。 兼業NOということは、行政から言われた業務以外で事業を立ち上げて収入を得てはいけないという話ですね。任期付き公務員だから、というような杓子定規なことをいうようですが、長期雇用する予定がない人に「副業もするな」というのはあまりにブラックすぎます。もし副業させないのであれば、しっかり正規雇用で若者をやとって地域に入れるべきです。正規公務員として。 期限付きで雇用するのだからこそ、あくまでベース賃金としてお金は払うが、それ以上は自分で稼ぐのが当たり前。さらには、将来は全く保証されていないのですから、そのプラスで働いている収入が将来のベース収入になっていくという流れのモデルでないと、当然ながらそこで生活はできません。 概して地域にもともと住んでいる人より、地域外からきた人には倍くらいは給料があって然るべきなのです。所得ベースだけでみるから不均衡に見えますが、実際、もともと地元に住んでいて土地も家もあり、田畑ももっていたりする人と、地域外からぽんときて、家賃も払い、生活すべてをゼロから立ち上げる人のほうが明らかに条件は不利なわけです。だからこそ、このベース部分は3年だけは保証し、けどそれでも足りないから、プラスαで事業を立ち上げ収入を持たせる。 「あの地域にいったら儲かった」と地域おこし協力隊に言わしめることが、地域活性化を目指すためにやっているのであれば大切なところです。もちろん受け入れ側の問題ではなく、上記のようなモデルとしてベース収入として月20万は出しますが、独自事業を通じて、1年目:月5万、2年目:月10万、3年目:月20万の収入を生み出すことを想定して進めていきます。そのために地元も〜〜のようなことを用意します。といったカタチですね。 といった内容にすれば、また応募する人材も変わっていくように思います。 (3) 募集審査段階で、「特技」(手に職)をつけている人を優先すべし 特に、地域活性化に必要なのは、平均的に高い成績をとって高い偏差値の大学に入る能力ではありません。毎日ちゃんと学校に通い、先生のいうことを聞き、友だちと部活動をし、恋愛をし、受験をして進学をしていくというその「普通」の中で、抜かりなく平均を上げていくということは正直、一定ライン以上できることに越したことはないですが、だからといった何かの役に立つかというと厳しいわけです。それは、誰かが決めた、分業された仕事を、きちんと他よりもできる、ということを想定して行われてきた人材開発の教育です。それにそって大企業、大組織になどに属して仕事をした経験があっても、大抵は分業された仕事なので、1から10までを自分で見よう見まね、分からないなりにやってみることは許されません。仕事の全体像を一人でこなすなんてことは、当然大組織が取り扱う仕事では不可能ですし、そんなことは要求されてもいません。 ただ、地域での事業は自分でなんでもやらないと、人手なんてないし、そもそも人を雇う金なんて最初からはありません。だから、地域における事業で大切なのは正直、平均ではなく、一つでも特技があるか、にかかっています。 蕎麦が打てる、豆腐が作れる、建築とか好きで建物をいじれる、イラストとか書けるといったような、何かを作れる力であれば、あとは営業面での問題をクリアすれば良いわけです。経験でいえば、学生時代にでも300人規模のイベント開催を自分で取り仕切ってやった、飲食店を経営していたとか、人的資本蓄積があり、大したものでもなくても自分は知り合いに100人くらいに営業できる、とか、そういうことだったりするわけです。 地域おこしのリアリティをもう少しつきつめていくと、このような特技がどのようなものであるのか、というのが大切なわけです。平均的な入社試験的なものとかは全く意味がなく、一点で特技がある人にきてもらえるか、そこにフォーカスすべきと思いますし、そういう人は、3年くらいの短期間でもやれることは具体的に出せると思います。…

Felica携帯を活用した地域店舗情報配信端末の有効性 | 経営からの地域再生・都市再生

裏原宿でスタートしたfelica携帯のリーダライターを核にした店舗情報配信サービスがここ数日、テレビやネットで話題になっていますね。携帯電話を利用した商店街などでの商品紹介サービスなどは、ドコモはiモード時代にもかなりフラッグシップ事業として各地で取り組んでいましたよね。これまでは5年間はiモード、これからの5年間はおサイフケータイで稼ごうとしているドコモのサービス世界観を街で実現している感を受けます。 ただiモード時代には、なかなか定着まで結びつかなかったのですが、今回のケースではもともと携帯ユーザー層が厚い原宿をフィールドとしているんですよね。iモード時代にはもう少し地方とかの商店街や地域での実験が多かったんですよね。(IT関連補助金が結構当時はあったのと関係があるのかもしれませんが)その意味では、普及度か高いのかもしれないと思います。ただし、実際店舗があるエリアで各店舗に設置されたリーダーライターで毎度毎度書き込みするのは、最初は珍しく利用するのかもしれません。しかしながら、コンテンツが陳腐しないようにコントロールするなどをしないと、店舗別コンテンツの利用を維持していくのは結構難しいものです。これは早稲田などで実施していた各店舗のクーポンと空き缶・PET回収機事業でも、かなりコンテンツのライフサスクルが早く、常に内容の新鮮度の維持を各店舗に求めてゆくのが結構難しかったのを近くで見ていたもので。中長期的にはポイント事業などのユーザーの囲い込み戦略に入るようですが、継続的な利用に結びつけるキーがコンテンツの「新鮮度」と「有用性」にあるとは思います。 やはり個人的にスゴみを感じているのは、2001年から東横線が試験サービスを始めていたgoopasです。簡単に言うと、駅改札を出ると周辺地域の情報やクーポンの配信が行われるものです。このサービスだとわざわざリーダライターなどにかざす作業が必要ないので、とても楽なんですよね。これまではiモードのような配信サービスでの提供でしたが、すでにおサイフケータイでsuicaとかが組み込まれると、goopasに類するようなサービスの立ち上げはかなり簡単なのですよね。しかも、登録作業や変更なども簡単にできるようになります。 今回のようなリーダライターでの書き込み端末を設置しまくるよりも、ワンストップ、しかも改札のような一般的に現状であるアクションだけに付加サービスとして組み込んだほうが顧客の手間が現状から増えずに利用できます。しかも、コンテンツなども各店舗別での更新にするのではなく、リクルート社のホットペッパーのように一箇所で選んで、厳選した情報を登録情報を元にカスタマイズして配信してもらったほうが、便利です。(特に初めて言った地域では、どの店がどのような店なのかをいちいち確認して読み込むのは手間です。ある程度コンシェルジェ的なサポートをシステムで行ってくれたほうがよいです。) なおかつ、改札を出た時間を基点として、1時間後、2時間後、ランチタイムなどにあわせてメールなどで情報を配信するなどして、滞留を促すと共に、街を遊べるようなサービス性も付加すると、よりアミューズメント的な形になると思ったりします。何年か前に凸版印刷がICチップを利用して同類のサービスを持っていました(World PC EXPOで実験利用されていました) このように、大本命は「Suica」に「goopas」を組み合わせたサービスを飲食なら「ホットペッパー」、その他の店舗情報を持っている組織(裏原宿ならurahara.jpなのかもしれませんが)と組み合わせて提供するのが、一番よいのだと思いますね。 ということで、端末を店頭に置いて顧客に読み込みをさせまくる方法がどれだけ継続的にいけるかどうか、もう少し時間を見て有効性を検証してゆきたいと思います。

電子マネー小売業での利用メリットと支援サービスの可能性 | 経営からの地域再生・都市再生

電子マネーの小売業などでの利用は、edyを商店街単位で導入したりするケースなどで沢山出てきていますよね。しかしながら、実際の事業面での効果などはあまり良く調べられていなかったですよね。依然もこのブログで取り上げた記憶があるのですが、edyを以前から取り入れた仙台の地方スーパー・アサノでのケースの詳細が取り上げられていました。面白いケースなので、ご存知でない方はどうぞ。 またこの内容を見ると、電子マネーをツールとしてFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)の運用に生かしていることが分かります。日本においてもポイントカード事業などはFSPの代表的な普及プログラムですが、さらに最近はedyなどの決済機能と組み合わせた複数のプログラムを同居させられるプラットフォームカードが可能になりました。つまりポイントサービスとともに、プラスアルファのサービスなどを組み合わせたサービス提供が差別化には必要になっているといえるわけです。先日サイボーズが、さまざまなポイントをedyに転換させるサービスのようなものを始めました。相互互換性をきわめて高めてゆくというのも確かに一つなのかもしれませんね。 ただFSPは基本的にマーケティングだけに留まらず、店舗経営の根幹となる情報によって顧客の絞込みとかを行うことになりますので、個人的には現在のような安価に顧客管理が可能な今こそ、データを活用した商店街などの個別店舗支援を行えるのではないか、と思っています。マーケティングサポートから、金融までを含めたものです。このような動きも現在ありまして、この夏から研究会に参加させていただくことになりました。 ITはITだけの事業ではなく、現在の事業のベースを根幹から変えるなどの触媒的機能があるからこそ、一時期革命とまでもてはやされたと思っています。次世代を支える、商店街のユニークな個店を支える仕組みが必要なのだと感じます。

日本初の本格的LRT路線-富山市中心市街地の交通政策- (No.412) | 経営からの地域再生・都市再生

都市交通政策は、中心市街地活性化においてもしばしば取り上げられる重要な地域内経済に大きな影響を与えるファクターであとる考えられています。これは、現在の中心市街地空洞化などがモータリゼーションによって、旧来の人間の行動とは異なる流れ(歩きが中心)が変化したからだとする考え方に基づいています。 特に、欧州などのケースでよく紹介されるトランジットモールを支える中心部への公共交通機関として「LRT(Light Rail Transit)」があります。日本において中心市街地においてLRTを導入することで活性化に結びつくのではないか、という期待がもたれているのです。 そんな中、富山市で本格的なLRT路線が先月開通し、今月になり色々と雑誌やネット等で情報が掲載されています。富山には元々富山地方鉄道株式会社が運営している路面電車が富山駅南側を中心に入り、中心市街地への足ともなっていました。ただ、今回はそれがLRT化したのではなく、富山市の北側に通ってた元JR富山港線(戦前は富山地方鉄道が経営していたらしい)を第三セクター方式の運営会社に移管し、それをLRT化したものです。 富山に住んでいる友人に聞いたところ、「まだできたばかりでよく分からないが、自分はほとんど車で移動するし、結局は車社会だよね」という話だった。ネットなどで色々と意見があるので見てみると中心地などのへの出勤や通学などにも使われるようで、JRによる利用者数調査では05年観測で平日2266人に対して、休日は1045人ともあるようで休日の買い物などで利用するというよりは、より平日の交通手段としての役割が大きかったようです。 今後は、富山駅に北陸新幹線が開通するのに際して富山駅を高架化し、その後は元々ある南側の路面電車路線と接続することを計画しているようですね。中心市街地周辺では比較的路面電車を利用する場合がある(駐車場の問題などもあるようで)とのことですが、それでも近年はやはり厳しい状況に置かれているようです。 以下のグラフからも分かるように、富山駅周辺、中心市街地周辺どちらでも通行量はかなりの勢いで縮小しているのが分かります。やはり富山でも全国の例外ではなく、郊外大型SCやロードサイド店のほうがとても便利でかつ買いたい物がそろっていて車でも行けて家族にも好評ということで、そちらに購買活動の中心は移っているようです。中心街でも再開発プロジェクトなどを活発に行っているようですが、それがどのように地域全体の経済構造に影響を与えるかはまだ未知数といったところでしょうか。 ■富山駅及び中心市街地通行者数調査(H.17)より 恐らくLRT路線などはそれ単独で意味を持つのではなく、自動車による通行を制限するようなこと(車の車線を減少させてしまうなど欧州では行われているようですが)、郊外から車よりも中心街に来る手段として便利なものになる、という自動車というとても便利な手段の代替とまでなるには、色々と手段を連鎖的に講じないといけないのではないか、と言われます。またそれに合わせて商業機能の再興を狙うのであれば、それに対する手段も必要と考えます。 実際に富山での試みが、具体的に今後どのような成果を挙げてゆくのか、都市政策と中心市街地活性化の関係を見る上では注目されるかと思います。