地域を変えるのに「個人」はどう成長すればいいのか。 (No.1033)

「地域活性化において必要なものは何ですか?」と聞けば多くの人は「人材」と言ったりします。

しかしながら、これまでのまちづくり、地域活性化分野においては、「こういう取り組みが必要」という話であったり、「こういう組織が大切」という話であったり、はたまた「このような制度が無いからダメ」といったような、事業内容や組織構成や制度の話に落とし込まれることが多くありました。が、それはまぁ単なる言い訳で、自分でやれることをやろうとしない。できないことがあるなら、自分でやろうとしないということを、人のせい、社会のせいにしているだけなんですよね。


◯ あなたのまちにスーパーマンは来ない

そういう時に成功事例を取り上げ、それを実現しているスーパーマンを題材にして「こういう人材がうちの地域にいないからなー」といったような話になる。貴方のまちにはウルトラマンも仮面ライターもスーパーマンもこないよ、という話なのですが、どうにもそういう話になる。

(参考)あなたのまちにウルトラマンも仮面ライダーも来ない。 (No.1014)
http://blog.revitalization.jp/?eid=810904

「自分が成長してできるようになろう」というような気持ちはなくて、今ある状況、今ある人材では不可能なことは、今後もずーーーーっと不可能で、だから予算をもらって他人に委託してやってもらおう的な話になる。

つまりは「他力本願」なわけですわな。「自前主義」でやろうという話にはならない。

できないことはできないという考え方。ただ本当にそうか?という話です。小学生の時とか、足し算ができなかったのに勉強すればできるようになったし、逆上がりだって練習すればできるようになったわけです。ま、諦めた人はいるのかもだけど。笑

ということで、地域再生に人材が必要だっていうならば、自分がまずは地域に貢献できる人材にならないと始まらないし、それは十分にステップを追っていけば可能なことも多くあります。


◯ いきなりイチローになろうとするな。

多くの場合には、いきなりスーパーマンの業績を視察しにいって「うちらには無理」と諦めます。
アメリカのスタジアムにいって、イチローの打席をみて「俺に野球は無理」と言っているようなもので、そりゃそうなのです。不可能なのです。視察を数度しただけで、全国でも有数のケースを真似るなんては不可能でしょう。

しかし、そこで諦めてたら終わりです。まずは諦めないことはとても大切です。ただし、いきなり難易度の高いことを挑戦すれば、失敗する。

だからキャリアラダー(キャリアアップのためのはしご=ラダー)が必要なのです。ステップに沿って、まちづくりでも、「まずは活動からスタートし、活動レベルで結果出せるようになったら、次は事業に挑戦」のようなステップバイステップでいけばいいだけなのです。なぜにいきなり難易度の高いところに挑戦して失敗して心折れようとしているのか、という話です。

 
◯ 人材には「非常識な心得」と「適切な経験」と「体系化された技術」が必要

人材は基本的に育てるものではなく、基本は「見つける」のが全体の80%を占めると思っています。
やはり三つ子の魂百まで。幼少期から違う人は違うわけで、常識を破壊できる人は、小さい頃からかなりの破壊経験を繰り返している人だったりします。そのような人をまずは見つける必要があるし、「あ、俺そうだ」という人は、地域活性化で変化を生み出す人材になりやすい。

その上で、「非常識心得」を持つ必要があります。変な常識が沢山はびこっているので、「みんなの話の前に、自分はどうなの?」みたいなこと含めて、向き合うべき心得

さらに最初にやり方を教えるのではなく、まずはやってみて、その上で他の人はどうやっているかを知るほうがよいのです。というのも、あくまで今やっているやり方は、一手法に過ぎず、それが万能でも完璧でもありません。だからまずは自分で自由に考えてやってみて、失敗したりした上で、他人のやり方を聞いたほうがいい。そこで「あーそこはそうしたらいいけど、ここは俺がやったやり方のほうがいいわ」という取捨選択もできる。

なんでも教わってからやる、のではなく、まずはやってみるという経験が必要。ただし、これは前述のようにステップバイステップで適切な経験をしていかないと、いきなり無理ゲーとなるような難易度の高いステップに突入すると、そこで心折れるような大失敗になったりします。私も幾度となくありますが。笑

また、もう一つは、体系化された技術の必要です。
まちづくりにもマーケティングが必要、といつつ、じゃどういうやり方が一般的なマーケティング手法とまちづくり分野が組み合わせできるのか、を事例だけでなく、ある程度、一般的かつ抽象的に説明できることも大切です。この努力をまちづくりり分野はしてこなかった。すごい事例とすごい人を取り上げて終わり。技術論はかなり放置してきました。これらをちゃんまとめていくことは今後必要ですし、これから始める人も実践の後に読むと、自分たちの問題解決にも活きてくるものです。



ということで、本日発売の「まちで闘う方法論」は、まさにまちで活動・事業に取り組む「実践する個人の成長」にフォーカスをした一冊にしています。なので一般的な地域再生論とかそういう話は全くなく、あくまで実践する上で、私なりに必要だと思っていること、そして実際に自分や周りを見ていて思う成長ステップ、さらに主な技術論を抽出して3章構成でまとめたものです。

難しい公民連携事業とかその解説とかそういうものはないです。むしろ私が高校〜大学院時代にかけた頃、活動参加から自分で会社として地域活性化に取り組むまででの内容をある意味の「しくじり先生」的にまとめているところもあります。

ということで、まちで実践する方に読んでいただければ幸いです。
変な地域活性化人材開発セミナーよりも有益な内容にはなっているのではないかと思います。何しろ3年かけて、捨て去っていた過去の失敗していた事例などを思い返しつつ書きましたので。笑

本書の構成は以下の目次を見ていただければよく分かるかと思います。





ということで、よろしくお願いいたします〜!!!

先日発売になっている共著本「地域再生の失敗学」も好評発売中です。在庫の枯渇状況続いていますが、GW明けくらいから2刷も出回り在庫もある程度満たされていくと期待です。
 
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【5/7発売】木下斉「まちで闘う方法論-自己成長なくして、地域再生なし-」
【2刷御礼】飯田泰之・木下斉ほか「地域再生の失敗学」

[10刷御礼] 木下斉「稼ぐまちが地方を変える-誰も言わなかった10の鉄則」
[7刷御礼[ 木下斉[まちづくりの「経営力」養成講座] (地域で事業に取り組む時の本)
[4刷御礼[ 木下斉・広瀬郁「まちづくり:デッドライン」(リノベーションまちづくりの本)

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既存建築・新築・再開発をつなぐ、エリア・アセット・マネジメントの挑戦 (No.1032)

 

愛知県春日井市勝川。もう代表つとめる 水野 隆さんとのお付き合いは16年前に遡るのですが、なんだかんだで事業を共にするようになったのが3年ほど前。

2年前に商店街の店舗兼民家をリノベーションしてシェア店舗TANEYA (http://taneya.tv/ )がスタート。 嶋田 洋平さんにもきてもらったり、メンバー研修をしつつこの開発プロセスで逆算開発、補助金に頼らない民間資金活用などについて学びつつ3ヶ月ほどで営業終えて、半年くらいで事業スタート。

お陰さまで、入居者の皆さんと地域の方々のご愛顧により、施設側は計画通りの1.5年投資回収を終え、さらに入居者さんは予想を上回る業績をあげてこられています。 百時の 素美さん、 河野 明子さんをはじめとして多くの方を巻き込み、事業成長と共に、様々な成果を上げられているのがすごいです。

その成果もあり、勝川周辺への出店問い合わせなども2年前よりは格段に増加。

ちょうど、その頃にとある土地の買収の話が出たのです。それが写真にある更地となって放置されていた商店街のど真ん中の敷地。もともとTANEYAでの事業法人でもある、勝川商業開発(地元の資産を持つ地権者たち長老たち・写真でわかるはずw)の皆様が購入をいつの間にか決断。

 

「もう土地買ったよ」という話で、「買う前に相談してよー」ということなのですが、買ったのであれば、これを効果的に活用した事業を仕込むことになりました。

そもそもの需要が拡大していた背景と共に、様々な企画で集客を集めるものを勝川はやっている一方で自分たちで自由に使える広場や小回り聞くスペースがないということもあり、それらをどうにかしようという話が出てきました。

それらを統合し、例の如くの「逆算開発」「補助金は使わず、金融活用」でコンセプトにあう店舗の募集と調整を重ね重ねて10ヶ月ほど。途中「出来ないのではないか」と思うこともありましたが、木下の細かな管理にも負けずw、現地の方々の熱心な営業によって、一歩一歩進んでいきました。

その後は 河合 忠さん、 山田 貴之さん率いる、建築チームに厳しい予算制約の中、テナントとの調整と共に、活用できる「稼ぐ共用部」の開発という2つを調整しながら進めてもらいました。これは本当に地元建築チームの賜物。当初どのような構成にするか、 広瀬 郁さんにスクラッチの議論を整理してもらったりしていました。入居者の人たちと幾度と無く調整を重ねつつ、最後はスケジュールとの勝負となっていきました。

また、ネーミングについては世代の間、既存居住者と新規居住者との間などを埋めるというコンセプトから「ままま勝川」という名前に。minna( http://minna-design.com/ )の 長谷川 哲士さんに愛知出身ということもあり、サイン計画までをサポート頂きました。

 

そして、ようやく施設が完成し、先日お披露目パーティーとなりました。今回の入居者の皆さんも、TANEYA同様に長老の皆様からすればとても若い世代ばかりです。

 

今回の開業を機に、TANEYAとままま勝川の管理と共に、それらの共有部運用、駅前の再開発施設での低利用共用部などを共同で活用ビジネスを展開する、「株式会社勝川エリア・アセット・マネジメント」を私も含めて出資して設立。

ままま勝川は特に底地は20年で切りつつ、上モノは底地の10年返済分を織り込んでも11年以内で投資回収を終える計画になっています。さらに、共用部をイベントビジネスで活用することにしており、ビアガーデンやハロウィンやクリスマスマーケット、周辺生産地とコラボした収穫祭など様々な企画を週末に展開して稼ぐことで、施設側としては投資回収がより圧縮でき、またエリア・アセット・マネジメントの財源に繋がる計画になっています。

さらに施設としては8割はテナント収入で回すことにしつつ、2割り程度になる8坪のギャラリーと24坪のホールは事業計画の上振れを目指す運用を目指すものです。また、一定の固定費を抱えることで、エリア・アセット・マネジメントとしての背水の陣を抱えるプレッシャーを与えるモデルにしているのも各地での経験を踏まえた構造にしています。

ま、このあたりの構造などについては今度改めて資料に整理します。

 

どちらにしても、これからが勝負。まさにビジネスとしての成功を実現しなくてはならないのです。

先日のお披露目の際にも、市長さん、議員さんもお越しになられましたが、「補助金ではない支援は、ここで飲み食いしたり、お客さんを紹介していただけること」とお話しました。まさに社会資本が豊かな議員の方々は、本来は行政予算の割り振りだけでなく、自らのそれら資本をもって地域に貢献できることでもあると思います。ビアガーデンの際には事前チケット販売で相当枚数を購入いただけるものと思います。笑

どちらにしても今度は1-2年に一つずつリノベーション・新築を組み合わせながら、10年ごとの変化に対応できる、季節で変化していく小規模店舗集積を皆で図っていこうと仲間と共に誓いました。

どこの地域でもそうですが、始まる時は不安になるものですが、上の世代から若い世代まで、政治、行政、民間の垣根を超えたフラットなチーム感が勝川の強みだなと思います。

まちを変えるのは「民の覚悟」。様々なセクター間での関係も再構築が必要となる縮退社会=成熟社会において、勝川はどのように今後展開していけるのか。休むこと無く動き続けなくてはなりません。

挑戦は続きます。


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2/13(土)21:00より、ちきりんさんとネットで地方に関するトーク配信します。

ブロガーとして有名なちきりんさんと2/13(土)21:00より地方に関するトーク配信をすることになりましたー! 

昨年、東京FMの番組などにお邪魔しつつ、お知り合いになりました。
その後も、色々とお話をさせていただく中で、やはり地方の話はもっと色々な人にも伝えていくべきだね! ということになりまして、トーク配信をすることにしました!

といっても、お初の試み。当日なんかトラブルとかもありそうですがw、まぁひとまずやってみようという挑戦ネタでございます。

ちきりんさんのブログは以下です。トーク配信についての予告も書かれているので、ぜひ事前に読んでください。紹介されている地域に関連する過去のエントリーもぜひ読んでくださいね。


ちきりんさんの本はこちら。一冊も読んだことない人はぜひ一冊くらいは読んでおくと、よいかなと。自分の頭で考えよう、とか入門本としてよいと思います。

基本的にメディアが流す「美しい地方の頑張り」みたいな話をマトモに信じちゃいけないよ、ってあたりです。都市がダメで地方がいいわけでもなく、地方がダメで都市だけがいいってわけでもないわけで、そのあたりは両面みなくてはならないです。特に、地方が衰退している状況においては、やはり今のガバナンスを握っている人たちに多少なりとも問題は多々ありまして、だからこそそこをしっかり理解した上で地方でビジネスしたり、移住したりしたほうがいいよと思うところです。

この世に安易な楽園なんて存在せず、自分なりに考えていく情報の適切な判断能力が必要になります。

50人の移住があっても、50人が自然減となり、さらに50人が流出すれば、人口は100人減っていきます。だから減ることを悲観することも、逆に多少の誤差のような移住数で「成功した」とかいっても意味はないわけで、重要なのは現象に合わせて行政もスリム化し、破綻しないように経営していけるのか、というあたりだったりします。この話はいつも木下はしていますが、未だなかなか伝わらないんですよね。

もう2年前にもなりますが、以下のエントリーは読んどいてください。

消滅可能性都市のウソ。消えるのは、地方ではなく「地方自治体」である。 (No.1016)

このあたり過去の失敗を若者が地方にきて解決してくれる、なんて都合のよい考えをもっている政治行政分野の方々も少なからず存在しており、そこにおいてその若者の中長期のキャリアとかは完全に無視しています。当座の流入増加が達成されれば、今のセクションにいる自分が評価されるからOKという話が、それほど悪いことだともなんだとも思わずやっているわけです。

多少の給料を国からの交付金を自治体が活用し、3年の時限という期限付き雇用のモデルで若者を雇い、移住してもらって、さらに地域課題まで解決してもらうという都合のよい狙いの「地域おこし協力隊」なんてものも同様です。期限なし正規雇用でやってきた地元の行政マンはそのままに、移住の数字を稼ぎ、課題も解決してもらうなんて都合のよいことを、期限付き雇用の若者に押し付けるなんてこと自体が変な話です。解決する能力のない人のほうが、解決を期待されている人より高いという矛盾もそこにあります。

なぜ地域おこし協力隊は派遣先で困るのか。5つの改善策 (No.1029)

しかも3年間のキャリアロスをし、しかもその間やっていたのが、閉鎖直前の集落の見守りとかだったとしたら、ますますもってその後の転職とか考えた時にも結構なダメージになるわけです。若いころの3年間ってとんでもなく大きな差になる時間であって、ここを真剣に考えないといけないわけですが、なかなかそういう募集にもなっていません。

この国は当座の数字をどうにかするため、過去の失敗を何か新しい施策によって取り繕うために、「若い人」の時間や、時に命さえも犠牲にすることが、社会正義あるいは美談のように語られたりします。地方創生はまさに「失敗の本質」のケーススタディとして後に回顧されることになると思います。

あ、失敗の本質読んだことなければぜひ読んてくださいね。本ブログの必読書の一つです。

「失敗の本質」

ということで、トーク配信では18年ほど商店街などかなーり地方でも政治や行政と絡みつき、しかも私利私欲が前に出てくる業界でやってきた中からの語りをさせて頂きますw ま、お前がみてきたのはあまりにグロい世界すぎて、それは地方じゃねーぞ、とか言われそうですが、私にとってはそう見えていて、その中で古今奮闘し、仲間をみつけて事業をやってきているというところもまた地方の一面でもありますので。笑

ということで、なんか真面目に書いてしまいましたが、当日は基本的に面白おかしくやっていきたいと思いますので、よろしくおねがいいたしますー! 

ほんまでっかラジオみたいなもんですね。笑

地域で事業と政策を仕掛ける人が読むべき20冊(2015年版)

一昨年はやったんですが、ちょっと去年は更新できなかった、読むべき20冊シリーズ。
2015年もいよいよ年の瀬ということで、upいたします。多少でも皆様のお役に立てばと思います。

◯ 学習と実践のリンクの重要性
推薦図書一覧に進む前に、ちょいとウンチクです。笑

地域における取り組みを進めていく上で重要なのは、「学習」と「実践」のリンク、そしてそこから体系的理解への昇華にあると思っています。現場で何か事業を推進する際に、一定の知識は必要になります。

それは直接的に事業に役立つノウハウということではなく、社会構造的な問題の認知であったり、実際の目に見えない経済的な財の交換プロセスを頭で把握する知識であったり、初めて出くわす問題を自分で整理して解決策を検討する論理的な思考方法であったりします。

それらを学ぶ上で、本や論文などは様々なの人の知恵を整理して短時間に学習できるツールです。しかしながら、頭で分かるだけでは、定着はしません。自分なりの実用をして、ようやく学習した内容は定着をします。さらに実践から自分が学習した内容の過不足などが理解できるようになり、それを反映することもでき、進化させていくこともできます。

さらに、これらの相互運動を経て、既存ではまとめられていない知見を発見すれば、学習・実践の両面から得られた体系的な理解へと自分で昇華していくことが責務でもあります。これによって、自分より後発で同じような取り組み、課題に向き合う人は、自分なりに考え方、取り組み方を学習することができるようになります。そして、前述の学習と実践がまた別の人の下で始まるのです。この連鎖によって、人類の様々な知識・知恵は進化してきたと思います。

今までは現場で事業に取り組む人は実践だけを考え、研究者が学習をするということであったり、体系的理解なんて意識する必要がなかったと思います。しかしながら、日本の抱える強烈な縮小都市問題は、全国各地において実践する人が自ら学習し、そして実践に活かし、その相互作用から有効な体系的理解を生み出す必要があります。そして地方での多くの人の取り組みから得られる体系的理解をすりあわせて、一つの理論へと進化させる必要があります。

海外や東京から何か知見をもらって、それをそのまま劣化コピーすればいいという時代は終わりました。学び実践し、自分たちで一つの体系的理解を生み出さなくてはならないと思っています。高校時代に「専門家」と「実践家」は両立しないと、新しい社会課題分野は解決策を見いだせないなと思ってから、このバランスを常に意識するようにしています。といっても、なかなか両方うまくはいかないですが。笑

とはいえ、何の学習もせず、単に実践をしていればいいということではないと思っています。その逆も然りです。
ここにご紹介するような有名図書(私の本も入れちゃっているので、それは手前味噌で恐縮ですが・・・)はしっかり読んで、頭に入れておいてほしいと思います。そして、読むだけでなく、実践をして頂ければと思います。これらは学習だけでも有意義な本ではありますが、実践にも当然役立つものばかりですので。

ということで、その学習と実践のリンクを常に意識していただければ幸いです。



◯ 必読の20冊一覧【2015年度版】
2015年現在、読んでいないものがあればぜひとも読んでいただきたい20冊です。
以前もブログなどで紹介した鉄板本も入っていますが、改めてという意味で入れています。

またkindle版があるものは、そのリンクも入れておきました。
基本的にkindleで購入したほうが、割引がきいていたり、ポイント還元がついているものがありますので、利用されている方はご確認くださいませ。

【1】V字回復の経営
http://amzn.to/1NOIVzA
(増補改訂版)http://amzn.to/1OqM7GZ
中小企業再生に関する一冊であるが、衰退した地域を再生する事業推進においても参考になる。実際に中小企業再生で手腕を発揮した著者が書くビジネス小説のため、読みやすく実践に活かしやすい。下町ロケットよりリアル。

【2】失敗の本質
http://amzn.to/1NOIULX
(Kindle版)http://amzn.to/1mDifuP
旧日本軍の各戦闘敗北を整理した一冊であるが、今の地域で起きる活性化事業の失敗にも繋がる。私達は過去から何も学んでいないのかという反省と共に、対策も見える。

【3】決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法
http://amzn.to/1NOIVj1
(kindle版)http://amzn.to/1OqMi5b
財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の意味が全く分からないという人が、それらを理解する上で最適な一冊。小難しい仕分けだなんだとかではなく、それぞれの意味、互いの相互関係を理解できる。

【4】イノベーションのジレンマ
http://amzn.to/1NOIXaw
(kindle版)http://amzn.to/1OqMfGC
大企業がなぜ中小企業の新サービスなどに負けてしまうのか。それは行政が多額の予算を投入しても、民間の小さな事業のほうが地域活性化の効果を生み出すのと近似。予算も人材も潤沢に抱える組織だからこそ社会(市場)変化に失敗してしまう理屈が理解できる。

【5】[新版]ブルーオーシャン戦略
http://amzn.to/1NOIXHF
(kindle版)http://amzn.to/1mDilTk
予算事業で全国各地で同じような事業を一斉に国の予算を使って失敗する。地域活性化事業において目指すは、「皆がやっていないこと」である。その大切さを理解し、実践する考える上で有効。

【6】クリティカルチェーン
http://amzn.to/1NOJ1ai
(kindle版)http://amzn.to/1mDindN
プロジェクトを立てても予定通り進まず失敗する。プロジェクトマネジメントにおいて重要な要素を理解できる。

【7】マーケティング3.0
http://amzn.to/1OqMbGW
性能によるマーケティング、セグメンテーションによるマーケティングに続く、第三のマーケティング戦略について書かれたもの。これから地方の商品・サービスを広く売っていく上で極めて重要であり、チャンスであることが分かる。

【8】ワーク・シフト
http://amzn.to/1OqMcdY
(kindle版)http://amzn.to/1mDid6h
技術革新と世界市場変化によって大きく変化する「働き方」。半世紀前にあった仕事が今なくなっていることはよくある話。これから先を見越した際の自分たちの仕事のあり方を考える上で有効な一冊。

【9】小さなチーム大きな仕事
http://amzn.to/1mDiGFt
ベンチャー企業の仕事の仕方を記した一冊だが、地域での事業を仕掛けていく組織モデルを考える上で有効。昔ながらの毎日オフィスに集まるという形式にこだわりすぎない仕事の仕方が地方を変える。

【10】創造の方法学
http://amzn.to/1mDixBY
(kindle版)http://amzn.to/1mDiy8U
論理的な思考が必要なのは分かっているけど、苦手という方は多い。この本は論理的な思考自体をわかりやすく整理してくれている。因果関係、はどうしたら立証できるのか、が分かるだけでも、問題と原因を混在するなどの間違いは起こらなくなる。

【11】明治維新1858-1881
http://amzn.to/1OqMFNj
(kindle版)http://amzn.to/1OqMVfe
長らく続いた江戸幕府が終わり、明治政府がおこる際に、幕末において倒幕派の各藩はどのような事業に取り組んでいたのかが垣間見られる点が面白い。地域商社を持った各藩は海外において互いのネットワークを形成し、それは明治政府の礎になっていった。しかもそれを民主的に行ったという点も興味深い。これからの地域活性化においても極めて参考になる。

【12】二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?―人口減少社会の成長戦略
http://amzn.to/1OqMCkC
江戸末期の人口縮小社会において600農村を再生させた、二宮金次郎。彼の報徳仕法の一端を垣間見られるが、それらは今の地域活性化の指針ともなりえる、「事業」と「金融」と「財政」を組み合わせた内容。

【13】年収は住む場所で決まる-雇用とイノベーションの都市経済学
http://amzn.to/1mDiJkC
(kindle版)http://amzn.to/1mDiLJ7
高付加価値型のIT産業が集積するシアトルの高卒のほうが、低付加価値型の製造業中心のデトロイトの大卒より給与が高かったりするという、都市産業構造によって年収は左右される内容を整理した一冊。クリエイティヴ都市論とは実はある意味で、都市の因果を逆にする説明で併せて読むと面白い。

【14】クリエイティヴ都市論
http://amzn.to/1mDiQwD
(kindle版)http://amzn.to/1mDj5Yw
クリエイティブ人材が集まると都市の経済がプラスになり、競争力が上がっていくというクリエイティブ層と都市の関係を整理した一冊。年収は住む場所で決まると比較しながら読むべし。

【15】発展する地域衰退する地域-地域が自立するための経済学-
http://amzn.to/1OqN2Ht
もはや古典であるが、アメリカにおける大都市再開発やチェーンストアなどが地域の再生においては機能せず、むしろ多様な経済構成を独自資本によって持つ地域が発展していくという域外収支など地域の一体的経営を整理したもの。アメリカの話だと思わずにぜひ読んで欲しい。

【16】人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか―― スペイン サン・セバスチャンの奇跡
http://amzn.to/1OqN5TS
サンセバスチャンになぜ多くの人が訪れるか。その美食の店がなぜ集まり、海外から人を集めるほど強くなっていったのか。日本の観光産業を考える上でも重要な示唆がある事例を説明した一冊。
 

【17】新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
http://amzn.to/1mDjom5
(kindle版)http://amzn.to/1mDjk5W

デービット・アトキンソンが提唱する、日本は観光立国での経済成長を目指すべきであるという提言。日本も成熟国家化を果たしていくなかで、過去の歴史・文化の価値を再認識し、観光産業を侮らずに向き合うことが必要。過去の内需向け観光産業の体制のまま、単にインバウンド客を相手にするようないい加減なやり方ではダメということも分かる。

ここから下は2015年、木下が関係した本でございます。けど、ぜひ読んでもらいたい3冊です。笑

【18】PublicDesign
http://amzn.to/1OqN9D4
馬場正尊さんの木下も出させて頂いた一冊。ちょっと一部の方はあれなんですが、ぜひ読んでもらいたい対談ばかり。

【19】地方は消滅しない!
http://amzn.to/1OqN95P
上念さんが書かれた、木下もコメントなど執筆協力させて頂いた一冊。今流行りの人口論の危険性についての整理はしっかりと読んで欲しい内容です。社会は常に人口増減論に踊らされてきたんですよね。

【20】稼ぐまちが地方を変える
http://amzn.to/1mDjiLd
(kindle版)http://amzn.to/1OqNjKI
木下が今年出させて頂いた新書です。木下のこれまでの失敗(の一端。もっと沢山失敗があるのでそれはまた今後の本でw)と共に、試行錯誤の中で経営と地域との関係性を意識した事業と向き合う内容。さらに地域で役立つ10の鉄則などもまとめています。


ということで、以上長くなりましたが、ぜひこれらは年末年始を利用するなりして頂きましてお読みいただければと思います。

皆様のお役にたてば幸いです。

 
 
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600農村を再生した報徳仕法、現代に活かす10の教訓。 (No.1031)

人口縮小社会において、縮小する600もの農村を再生した取り組みが、かつて江戸時代にありました。


自ら自然災害が原因で衰退し、その苦労で両親をなくした一人の少年は、自らの手で薪を売り、田を耕し、失った田畑を買い戻して、家を復興させます。少年は青年となり、その手腕を買われ、依頼された借金に喘いでいた藩の重臣の家計も見事に再生。その後、藩主からの命を受けて今の栃木県に移ります。

その頃、天明・天保の大飢饉などにより、北関東から東北などを中心に多くの農村が廃村の危機に陥っていました。地元生産力の要である田畑は荒れ、各藩の財政は重税を貸してもなお足りずに借金を続けて破たん寸前までに追い込まれ、そのような悪条件から多くの住民は土地を離れて、他の土地へと移住していっていたのです。残る人々の人心は荒み、勤労意欲もなく、賭博に走り、わずかな利得を互いに奪い合うという有り様になっていました。

そのような環境下で、彼は移り住んだ衰退する三ヶ村の再生までをも達成します。

その噂は広く多くの人々が知ることとなり、全国各地の農村から再生依頼が押し寄せます。最初の頃は個別の申し出についても個別対応していたものの、もはや全てに対応することは不可能。弟子を集め、自らが取り組んできた農村の生産力再生と金融手法、さらに租税に関わる藩財政改革までをも体系的に整理し、その手段を細かくまとめたマニュアルを作成します。

それこそが「報徳仕法」です。
報徳仕法は、その後、弟子たちを中心に問題を抱える藩や農村に積極的に採用され、実に600もの農村を再生したと言われています。

関係書籍などを全部をまとめるのはいきなりは難しいのですが、ひとまず10の教訓としてまとめてみました。
その面白さを垣間見ていただければと思います。

【報徳仕法・現代に活かす10の教訓】

(1) 補助金は地域生産力を低下させる

彼は、自分が派遣される先に向けて支給されている支援金について、停止するように殿様に進言しています。
殿様がお下しになるから、地元の役人も農民もそれをいかに自分がもらうかということばかりを考えるようになる。といっています。貧しい地域が、自らの自らの生産力をもって生活を豊かにし、地域全体の再生につなげていく。それに集中させるためにも、補助金をやめてくれなければ、私はいかない、と云います。

これは今の地域でも同じですね。
地域で生産力を拡大するのではなく、単に補助金などの制度活用ばかりが議論され、やってみたら大赤字。地域はますます衰退したりするわけですが、その補助金関係で仕事をして得をする人たちがいる。役人もそれが仕事。民間でもそれをもらって何かをやるほうが生産力を拡大して儲けるというよりもてっとり早い。だからますます生産力がマイナスになり、財政負担も拡大する。

江戸も今も変わらないですね。

(2) 基礎税収に対応した、継続可能な地域財政計画を約束する

彼は、まず各世帯を周り、困窮の状況を図るとともに、過去の長期にわたる収穫記録から豊作、凶作の平均を求め、田畑の生産力分析を行います。生産力にもとづいて、妥当な租税を改め、基礎的な租税合計額を算定。それをもって、各藩の今にあたる基礎税収を算出し、その基礎税収額を下にして歳出予算計画を見直します。いわゆる収支均衡予算の策定を行います。彼はこれを「分度」と呼び、全ての仕法のスタート地点としていました。
もしこれを行わなければ、いくら民が生産力を拡大しても、結局は重税を課されるか、もしくは足りなきものを借金し続けることになり、不健全財政が継続し、結局のところ、民間は働けど生活が改善せず、生産意欲が奮起しないと考えたからです。当時は、既に借金地獄の藩も多く、商人などから決して安くない金利で金をかりつづけ、その返済でさらに重税を課していくという悪循環に陥っていたからです。

彼は「三年の蓄えなくして、その国、国にあらず」という中国古典からの引用もしています。

生産力拡大に基づいて、分度改定を行っていく健全な経営モデルを目指しているのは、今の地方自治体にも求められる考え方です。重要なのは、あくまで生産力の拡大が先であるということです。それに基づく、税収によって収支を均衡させていく。蓄財をし、時に投資をするとしても、返済の見込みなき負債を重ねていけば、必ずそれを一気に返済しなくてはならなくなる。

その時には極端な緊縮財政になるので、さらに地域は危機に陥る。常に余裕を作り、過度な緊縮が起こらないように、長期的な安定的財政計画を地元の税収を下に策定することが求められていますね。

(3) 税制優遇をもとに新規経済開発を優先せよ

彼は、既存の田畑の再生だけでなく、新田開発を積極的に取り組ませます。
新田開発は一定期間無税になるため、農民たちはこぞって新規開墾に取り組めば、豊かになるわけです。時に、既存の豊かな畑を豊かな農民から貧しい農民に売却させ、豊かな農民には自ら新田開発に乗り立たせるということもしています。当座の生活に困らない人ほど、より生産力を拡大するために投資させる。この循環で地域は豊かになっていきます。豊かな人が既得権のようにその生産力を我が物にしていれば、時期にその地域は衰退していく。当座の生活にこまる人は新田開発なんてしていられないため、いい場所を持つものばかりに搾取され、結局のところは地元を離れていく。

今の地方も同様ですね。農業も、水産業も、林業も、商業さえもそうです。

新たな産業力改善に向けたところに、既存事業者に今の権利を極力放棄させるようディスインセンティヴを設け、その資本をもとにして、新規事業に投資させるインセンティヴを設ける方向性が必要です。

(4) 不足生産力は移民を積極的に取り入れよ

怠惰な生産活動問題です。とはいえ、なかなか苦しくなると心も荒んできます。
地域が衰退するというから、新田開発などを指導すれば、「今の田畑だけでも大変なのに、新田なんてとんでもない」というわけです。であれば、ということで地域外から移民を引き受けるよう、家も田畑も用意して受け入れる体制を彼はつくります。やはり元々の生活を捨ててくるわけですから、住む場所や田畑が昔からある地元民と同じスタートラインでは誰も移住しません。だから、そういうスタートラインだけは作り、あとは自分で生産力拡大に向けて頑張ってもらうわけです。
しかし、地元民の一部は移民に対して無理難題をおしつけ、集落の様々なものに協力させ、仕事をやっていられないようにし、住みにくくなって地元を離れさせる。それで「どうら地元も捨ててここにきたような薄情な奴だから、次なる土地に逃げていったんだ」と罵る。溜飲は下がるかもしれませんが、地域はさらに衰退していくわけです。

今の時代も地域外から若い労働力を受けいれても、彼らに苦労するのが当たり前、といわんばかりにしたり、もしくはあまり協力的でなかったりします。それで最近の若い者は、、、という場合もありますね。もう少し地域として生産力を拡大していくために、元々の地元の人より豊かになる機会を提供するという意識を持って迎え入れないといけないわけです。

(5) 官民共に遊休資産は生産活動に活用せよ

彼は、潰れかかった家老の家計(といっても禄なので、企業会計に近いですよね。人をやとっているので今でいう)の建て直しをする際にも、使っていない庭の木などは梅の木にしたり、裏庭などにも売却可能な生産物をつくるように転換したりしています。

お金がないのに立派な庭を単に庭にしていたら単なるコストセンター、しかしながら有価物を育てる場所にすれば、それはプロフィットセンターになるわけです。マイナスがプラスに変われば、それは毎年積み重ねるととてつもない変化になります。また、かまどについてススについても、炊事場を任されている人たちから買い取る制度を作ります。鍋からススを細かに落とせば、燃料代が大幅に安くなるわけです。その燃料効率改善の金額を割り出し、その中からススの買い取り財源を捻出したりもします。これでコストセンターの負担も軽くなっていきます。

稼げないものだと諦めるのは簡単ですが、実は知恵を出せば活用できるものが沢山あるわけです。

公共資産などについても既に国内では余っているものがやまほどあります。一方で財源は足りなくなってる。
民間資産でも空き家も空き店舗もあるわけですが、これらも活用できる。

まちには活用できる資産だらけですが、過去のやり方に囚われていると活用されないんですよね。もっと知恵出すことが大切です。


(6) インセンティヴを効果的に活用せよ

彼の特徴はタテマエのみならず、個人などの純粋な損得意識をテコにして取り組みを設計しているところにあります。
先ほどのスス落としもそうですが、儲けが出る仕組みをつくって、その一部を従事者に還元するモデルにします。だから担当者は熱心にそれに取り組む。

新田開発も同様です。無税期間を効果的に活用することによって、個人にとって既存田だけではないメリットを認識させるようにしているわけです。

インセンティヴがなければ、誰も真剣に取り組みません。
しかも、そのインセンティヴを皆に理解させないといけないのです。

現代においては「べき論」とか綺麗な話にばかり注目が集まりますが、それはマヤカシであることが多かったりします。実際には、巨額の交付金などで展開されており、誰よりも資金を使うだけつかっている取り組みも沢山あります。そういうプロジェクトの関係者に限って、「まちづくりは損得ではない」とか「地域活性化で利益とか考えてはならない」とか未だに眠いことを言っていたりします。しかし、結局は利益をだしている誰かのお金を使って、地域の衰退を加速させているだけだったりするわけです。結局は雇用も増やせなければ、税収も改善しない。個人のメリットと地域社会全体のメリットは相反するモデルにならない。それを構築するのが重要なのです。


(7) 地域金融を用いて経済の複利効果を導入せよ

実は彼は、先の個々人にインセンティブを設けて得をさせた後、その資金をさらに集めて「五常講」という仕組みを作ったりしています。今で言う、信用組合、市民型のマイクロファイナンスの仕組みです。

それぞれが毎月1万円ずつもらえるインセンティヴが作られたとして、それを1年で12万。100人から集めれば、1200万になります。また、地元でタンス預金しているような個々人の資金、そういう様々な地域内に台流している資金を原資にして、金融事業を始めるのです。しかも、単なる貸金みたいな話ではありません。

彼は、経済開発、弱者対策、社会資本整備を金融の力で区分して行っていたことが極めて優れています。地域で富める人が事業や当座資金などで資金が必要な時はそれなりの利子設定をしてお金をかりてもらう。貧しい人には無金利で融資し(高利貸しからの借り換えなどを推進)、元本返済だけで良しとするが、元本返済が終わった後にはその返済金と同額を何ヶ月か出資させる仕組みを作ったりしています。これにより、貧しい人の生活再建をするだけでなく、返済能力=生活力としつつ、さらにその返済能力をそのまま生活に使うのではなく、出資させて、家計に金融収入モデルまでも作り上げます。労働力だけではない収入モデルを樹立するわけです。さらに、いわゆる社会資本整備についても長期低金利で投資・融資する仕組みをつくるなど、開発銀行のような仕掛けをつくっています。

このように地域金融を多重的に作り上げ、地域の余剰資金を使い、今では財政などでやっていることまで金融で仕掛けています。
これは現代においても、金融支援などのほうが事業が稼ぐ力を身につけ、地方を豊かにする事例が出てきています。地域内の資金で、地域において産業力に繫がり、公共サービスに繋がるものに投融資を展開すれば、その資金を預けている地元の人達にさらに資金が回るようになっていきます。この循環効果は複利的に発生するため、地域はより豊かになっていきます。

今はこの循環構造が地方では断絶してしまっているため、これを変化させるのが大切です。


(8) 家庭、産業、行政を一体的に考え、全体の収支黒字化を目指せ

報徳仕法は、「域外収支」などの概念がしっかりしています。
家庭においても収支をしっかり黒字化させる、産業においても同様で黒字化、さらに行政についても黒字化をして蓄えをしていくことを求めています。これが単純な緊縮財政と思われがちなところなのですが、弱者を切り捨てろという話ではなく、彼はあくまで弱い人にまで支援がいきつくためにも、堅牢な稼ぐ仕掛けをつくりあげようとしているところがあります。彼自身が自然災害で家族が崩壊した経験を持つわけでもあるので。

現代においては、地方におていはこのあたりの黒字化についての意識が、かなりごちゃごちゃになり、特に財政支援が多くつくことで、より判断が「使うこと」にばかりいって、収支のイメージがありません。公共事業さえ東京に資金が戻る仕組みになってしまっているところもあります。

今の活性化でも域外収支を意識し、個別でしっかり黒字化を目指すというのが、重要です。


(9) 成果の生まれるところから手を付けよ

いきなり困難な地域を取り扱わないのも重要です。
報徳仕法をやってくれときた藩の一部では、藩内で一番困難な場所を指定したりします。まぁ意地悪にやっている趣旨もあるし、なんか困っているところから手助けするのがいい、と勘違いしている人もいるからです。

重要なのは、成果がうまれるところからやる、ことです。
なぜならば、今ある手元資金で困難な地域を手がけたら、すぐに枯渇しますし、時間がかかりすぎる。結局成果が出る前に終わります。ただ成果がうまれやすいところからやれば、すぐに成果がでて、資金がむしろリターンで大きくなる。その大きくなっていく資金をもとにして、困難な地域はある程度成果がうまれていったうえでやらないといけない。成果が生まれれば、関係者の納得感も強くなり、物事は進みやすくなる。

彼は、何度も失敗している河川工事を任された時に、上の人から「お前ならどうしたらできるか」という答えに対して、「これは何年かかるかもわからないし、いくらの予算がかかるかも分からない。しかし、やり続ければ、いつかはできる。そのため、まずは河川工事をすることは後回しにすべき。そうすればできる」という回答をします。上のものは「河川工事をしろといってんのに、なんで河川工事は後回しにしていたらますますできないだろ」という話をするわけですが、彼は「河川工事予算をつかって、新田開発を行い、その新田開発から得られる収入を毎年の予算とすれば、永年完成するまでの予算を生み出し続けるモデルができる。だからまずは河川工事は後回しにして新田開発をし、それを活用すべき」というわけです。特定財源として、開発をしてその収入で何年かかるか、いくらかかるか分からない河川工事をすすめるべきというわけですね。極めて理にかなっていますが、当然そんなことは受け入れられません。今と同じ縦割り。順序などを戦略的に設定できないカタチです。

これは今も同じですね。なんか皆、困難なことから始めて成果がでれば、簡単なところはできると思っているけど、逆です。
簡単なところからはじめ、困難なところにシフトしないと、困難なところはそれだけマイナスが大きいので、必要な投資も時間も額が違います。物事の順序を間違えると、誰も救えないのです。さらに、順序によってはできないこともできるようになる。物事を1側面からだけ捉えてはならないのです。

私もまち会社設立の初回は確実に稼げる事業を作り上げて、その利益をもとに継続させる仕掛けを創ります。熊本城東マネジメントにおいてもごみ処理などのエリア全体でのファシリティマネジメントコストの削減をしてその財源で取り組みを続けています。このあたりの構造をいかにして効果的に維持、継続していくモデルとするか、が問われています。

(10) 身分を尊重はしても、信念は捨ててはならない

彼は農民から幕臣にまで登用された身ですが、それでもやはり元々の武士のような立場にはなれない。
しかし、相手に対して身分の尊重はしつつも、自らの信念を曲げるようなことはせず、道から外れたことは断ります。これは今の時代にも必要なことですが、意外と皆は迎合主義で、自分だけは嫌われないようにしていきます。

それによって地域の取り組みはますます変な方向にいったりしますね。信念を捨てないまちづくり。どこまでできるでしょうか。自分に対する宿題でもあります。

実は、このような報徳仕法をまとめた人物こそ、皆がよく知る「二宮金次郎(二宮尊徳)」、その人です。
彼は単に薪を背負って本読んでいる人として有名になったのではありません。彼が有名になったのは、報徳仕法を作り上げていく、自らの実践と体系化が評価され、さらに死後に報徳記という彼の取り組みを弟子が記した本が遍参され、明治天皇に上奏され、廃藩置県後の各自治体に配布されたことが発端になっています。しかしながら、彼はその思想性である、報徳思想が注目されたり、その忍耐強く幼少期から努力した姿が政策的に使われたりと、大変偏りのある評価になってしまいました。私は彼自身の実践におけるケーススタディも参考になるだけでなく、その報徳仕法(方法論)を現代の経済、経営、政策などの観点から評価をすると極めて立体的かつ重要な地域経営の方針として採用できると思っています。

そのため、人口減少社会における地方創生において最も参考にすべきは報徳仕法であると思います。
 
現在、二宮金次郎の超訳を「エリア・イノベーション・レビュー」にて不定期連載をしていますので、ご関心ある方はぜひ購読いただければと思います。来年にはどうにか報徳仕法に関する書籍をまとめたいと思っています。 http://air.areaia.jp/

東洋経済オンラインでも超絶簡単な内容を書いたのですが、あまりウケなくて泣きましたが(w)、かなりコアな方々が反応くださりました。コア向けですね。

◯ 「元祖再生人」二宮金次郎に学ぶ地方創生
http://toyokeizai.net/articles/-/59625

また、9/20 報徳二宮神社にてこのよう話の講演と、二宮神社の宮司である草山さん、大日本報徳社の榛村社長などとのトークも予定しています。ご関心ある方はどうぞ。

https://www.facebook.com/events/1656839841198445/
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