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まちに関わる学生は「事業」を仕掛けよう (No.992)

私が早稲田のまちに関わった15年前は、まちづくりなんてやってる学生は0.01%程度しか居ませんでした(実際に5万人程度の学生があるのに5人程度しかまちづくりなんてやっていませんでしたw)が、最近の多摩地区の大学向け調査とかみると20%近くが何らかの地域活動に参加したことがある学生がいたりします。本当に世の中は変わりましたよね。大学のゼミでもやっていたり、サークルがあったり、と関わる経路はいろいろのようです。

しかしながら、やはり取り組みとしては活動ベースのもので、内容的には「お手伝い」というものが多かったりします。中には「学生らしいアイデア」というものを期待した活性化プランコンペみたいなのやってみたりする地域もあるみたいです。補助金もらって空き店舗で店やってみたというのもあるみたいです。が、学生主導で大きく何かが変わったという話を聞いたことは大変希少なケースかと思います。

前述の通り、私自身は15年前の高校1年の時に講義とかではなく、個人的に関心をもって早稲田商店会に連絡して取り組みに参加したのが発端で今みたいな仕事をしています。高校3年の時に商店街の共同出資会社を任されて、大変酷な経験をさせていただきましたがw、それが今の糧となっています。何も分からないままに飛び込んだからこそ学びは大きかったと今となっては思います。だからこそ、地域に関心をもっている学生の人にも、お手伝いレベルではなく、もう少し現実の地域課題と真剣に向き合い、それを解決するために「事業を起こす」ということをやってもらいたいと思っていました。

そんな中、大学に地域系の専門コースなども出てきていまして、北九州市立大学地域創生学群の先生方と出会いました。その出会いから、昨年から北九州市立大学地域創生学群とエリア・イノベーション・アライアンスとのコラボレーションによって展開する、地域で自ら起業するための実践型教育プログラムを仕掛け始めています。

◯北九州市立大学×AIA 「地域起業型インターンシップ・プログラム」

簡単に説明すると、自分たちでまちなかの空き地やお店とコラボして、普段まちなかで商売などしていない人たちを巻き込んで、事業企画を組み立てるというプログラムです。しかも、リアルな現金を取り扱って事業計画を策定し、場所の確保も自前で行う、組む事業パートナーも自分で交渉し、決算まで責任をもちます。つまりは、お金を扱い、実際のまちを舞台に事業をやってみるということです。

北九州市の商店街などとはAIAでは前々からリノベーション事業など一緒に仕事する接点が色々とある地域でもあり、当然北九州市立大学の先生も実際に深くコミットしていますが、あまりお膳立てはせずに学生が自ら仕掛けることを重要視。

AIAからも講師派遣をして事業のすすめ方などを概説し、仕掛ける企画内容、事業計画を策定する一泊二日のブートキャンプを開催し、そこで決定した内容をもとにして1ヶ月程度で事業化してみることになっています。一ヶ月の間に数度の進捗確認会議を行い、値付けや集客状況など含めてお互いに管理しつつ進めます。重要なのは、計画したことを補助とかなしに自分たちで仕掛けて形にして黒字決算まで持っていくという一連のプロセスをやり切るということです。

学生向けのビジネスプランコンテストみたいなのやったりしますが、あれって無意味だと思うのはプランを競っても意味なくて、プレゼンがうまいだけで、実務やったら何もできなかったりする。しかもコンテスト止まりだと、それだけで評価されてしまう。勿論プレゼン能力も大切だけど、プレゼンだけで留まるのは全くもったいない。やはり実行してなんぼなわけです。

昨年から始めた本プログラム、今年で2年目になります。
最初は難しいかなと思いつつも、できるはずという意識で仕掛けたプログラムでしたが、やってみたら実に学生たちは創造を超える企画をたて、それを実現し、しっかり黒字決算を収めています。実に素晴らしい。地域に関わる大人でもなかなかやりきれなかったりします。

2年目の今年は、ビューティーレッスン。美容の専門の先生を呼んで、アクセサリーなどの関連商品の販売をしてもらったり、ドリンク販売をしたりという複合的に色々な人を巻き込んだ企画でした。しかも前日までに100人のキャパの9割を売り切ったという営業力が素晴らしいものでした。


KYOMACHI PROJECTでは、普段使われていない駐車場で、大変良い場所にあって皆が使いたいけどなかなか使わせてくれない場所を活用した企画。最初は地元の大人たちが「あそこはなかなか使えないよ」という苦言を呈していましたが、学生たちは交渉してここを突破。マーケット企画を開催。北九州にはポポラート三番街含めてリノベーション企画がバリバリ進んでいますので、ここからそこに出店していく流れもできるかもしれません。これは出店料ビジネスですね。


うおまち秋のマンガ祭という企画も開催したチームもあり、これは地元でマンガ収集家の人と出会い、まちなかのスペースを活用してマンガが読めるスペース運営というものをやっていました。今後の捻りは必要ですが、こういう出会いを見つけてくるあたりが面白いものです。10月13日にも開催するそうです。



やってみて驚くのは学生の成長速度です。
普段は全国のまち会社の方々などと事業開発やブートキャンプとか色々とやりますが、若さというのは自由な発想とかそんなものではなく、成長力だと思いました。純粋に問題に向き合い、課題解決に努力すると、数週間で目つきが変わったり、事業の問題点を自分で見つけてきたりと圧倒的に変わります。逆にこちら側も刺激になりますね。

最初は事業の仕掛け方などブートキャンプでかなり激しくこちらからけしかけますが、実際にやってみると、面白く、かつちゃんと黒字にする事業をまちで仕掛けてくる。勿論補助金とか一切なし。赤字になったら自分たちでバイトして返せ、レベルで話をする鬼プロジェクト(とはいえ、そんなことは知恵を絞ればそうそうないから、そこが僕ら実践してきた人間の知恵のサポートの出しどころ)。しかし、そういうガチの事業として取り組ませるから真剣味が出てきて、主体性もでてくる。

これによってできる事業は、AIAとして推進したい同時多発型の地域再生事業のあり方の一つでもあり、つまりは大学の講義でもあるが、実際の地域社会においても価値を生み出すという自己満足ではない二度美味しい中身であるのです。

北九州市立大学では来年からは正式な講義となる予定ですが、こういう実践経験は学生にとって将来どのような仕事に就こうとも力になるでしょう。だって自分でお金を扱って、大人たちと交渉して事業を形にして黒字にまで持っていくことを一回しできた人材は、働く段階になって確実にバイトしかしてこなかった学生とは実社会における戦闘力が違います。公務員になろうとも、実経済の手触り感があるだけでも全く働き方が違うでしょう。

地域と協業を推進したい大学と複数連携してAIAではこのような教育プログラムを国内で普及したいと思っています。複数の大学が参加することで、より学生間の刺激も増加しますし、AIAでは常に地域での課題と直面しているため、より事業構築力のある積極的に若手人材を各ローカルのまち会社で確保できる可能性もあると思っています。自分で業を興した経験ある人材にこそ、地域にきて一緒に事業を仕掛けて欲しいんですよね。僕らの狙いは教育そのものというよりは、地域にかかわる学生に「事業」を仕掛けてもらい、それによって地域を変えていきたい、そこにあり、実力ある人材に場合によっては起業して事業を作り続けて欲しいと思うところなのです。

また別軸では、海外の大学に留学しつつ、海外のまち会社にもインターンする、みたいなパターンもありえるなと思っています。それで国内外で活躍する人材も生み出して、AIAの考えるアライアンスによる事業の高度化を図っていく一人になって欲しいと思います。

学生の皆さん、教室をでて、まちに出よう。そうすれば、さらに学びたいことが沢山でてきて教室に戻ってみて学習し、さらにまちで試したくなっていくと思います。そのスパイラルが大切。

そして、こういう地域に資する人材育成に関心のある大学があればご連絡ください。もっと大学が地域における教育と貢献のあり方を変えられると思います。

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